判旨
不利益変更禁止の原則において、第一審の不定期刑に対し控訴審が定期刑を言い渡す場合、定期刑の刑期が不定期刑の長期と短期の中間を超えないときは、被告人に不利益な変更とはならない。
問題の所在(論点)
第一審の不定期刑(長期5年・短期3年6月)を破棄し、定期刑(4年)を言い渡すことが、旧刑事訴訟法403条(現行402条)の規定する不利益変更禁止の原則に違反するか。
規範
不利益変更禁止の原則(旧刑事訴訟法403条、現行402条)の成否は、言い渡された刑の重さを客観的に比較して判断する。第一審の不定期刑に対し、控訴審が定期刑を言い渡す場合、その定期刑の刑期が第一審の判決した不定期刑の「長期と短期の中間」を超えないものであれば、不利益に変更したものとは解されない。
重要事実
被告人に対し、第一審は懲役長期5年・短期3年6月の不定期刑を言い渡した。これに対し、原審(控訴審)は第一審判決を破棄し、被告人に対し懲役4年の定期刑を言い渡した。被告人側は、この定期刑の言い渡しが不利益変更禁止の原則に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件において、第一審が言い渡した不定期刑の範囲は長期5年、短期3年6月である。原審が言い渡した刑は懲役4年の定期刑である。この「4年」という期間は、第一審の不定期刑における短期(3年6月)を上回るものの、長期(5年)との中間点(4年3か月)を超えていない。したがって、大法廷判決の基準(中間を超えない)に照らせば、被告人にとって不利益な変更にあたるとはいえない。
結論
原判決が懲役4年を言い渡したことは不利益変更禁止の原則に違反しない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
不定期刑から定期刑への変更における不利益性の判断基準を示した重要判例である。答案上では、刑の重さを比較する際、不定期刑の「中間(平均値)」を基準とする実務上の定石として引用する。なお、現行法下でも少年法52条1項の不定期刑が介在する場合に同様の枠組みが妥当する。
事件番号: 昭和25(れ)1078 / 裁判年月日: 昭和27年1月22日 / 結論: その他
一 第一審においては被告人Aに対し懲役一〇年に被告人Bに対し懲役五年に処する未決勾留日数中九〇日を各本刑に算入するとの判決を言渡したが原審においては右Aに対し懲役一〇年右Bに対し懲役五年の刑を言渡し何れも未決勾留日数を本刑に算入しなかつたことは原判決が第一審判決より重い刑を言渡したものといわなければならない。 二 主文…
事件番号: 昭和39(あ)61 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
所論は、原判決は刑訴法第四〇二条の定める不利益変更禁止の原則に違反するとして、判例違反を主張するが、本件強盗殺人の法定刑のうち、第一審は無期懲役刑を選択、処断したものであるのに対し原審は死刑を選択し、第一審の認めなかつた被告人の犯行当時における心神耗弱の事実を認め、法定減軽の上無期懲役刑を宣告したものであることは各判文…