一 言渡された刑が他の犯情の類似した犯人に比して重いことがあつても、憲法第一四條に規定する平等の原則に違反するものでないことは、既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第四三五號同年一〇月六日大法廷判決)に示されている通りである。 二 しかし舊刑訴法第四〇三條の規定は、同條に定められた控訴の事件につき、判決主文の刑即ち判決の結果を原判決の結果に比して被告人の不利益に變更することを禁ずるに止まり、それ以上の制限を加える趣旨を含まない。(昭和二三年(れ)第一〇〇八號同年一一月一八日第一小法廷判決参照)
一 犯情の類似した犯人間の處罰の差異と憲法第一四條第一項 二 舊刑訴法第四〇三條の法意
憲法14條1項,舊刑訴法403條
判旨
不利益変更禁止の原則は判決主文の刑を原判決より重くすることを禁ずるものであり、一審が認定しなかった罪名を追加認定しても、刑が同一であれば同原則に違反しない。また、量刑は被告人ごとに個別判断されるべきであり、共犯者間で罪数や犯情が異なるのに同等の刑が科されても平等原則には反しない。
問題の所在(論点)
1. 罪数や犯情が異なる共犯者に対し同一の刑を科すことが、憲法14条の平等原則に違反するか。2. 控訴審において、第一審が認定しなかった罪名を加重的に認定した場合、宣告刑が第一審と同一であっても不利益変更禁止の原則(刑訴法402条)に違反するか。
規範
1. 憲法14条の平等原則に関し、量刑は被告人各自の性格、年齢、境遇、犯罪の情状、犯行後の状況等を総合考慮して各別に決定されるべきものである。したがって、共犯者間で罪の個数や情状に差異があるからといって、直ちに量刑の不均衡が憲法違反となるわけではない。2. 不利益変更禁止の原則(旧刑訴法403条、現刑訴法402条)は、被告人が控訴した事件につき、判決主文の刑(判決の結果)を不利益に変更することを禁ずる趣旨であり、判決の理由中で認定事実や適用法条をより重いものに変更すること自体を直ちに制限するものではない。
重要事実
被告人両名は強盗罪として処断され、懲役5年を言い渡された。共犯者Aは、強盗罪に加えて銃砲等所持禁止令違反の併合罪として刑を加重されたが、被告人両名と同じく懲役5年を言い渡された。また、第一審は住居侵入罪を認定していなかったが、原審(控訴審)は新たに住居侵入罪を認定した上で、第一審と同じ懲役5年の刑を維持した。被告人側は、共犯者Aとの刑の均衡が取れていない点(憲法14条違反)および、罪名を追加認定した点(不利益変更禁止原則違反)を理由に上告した。
あてはめ
1. 量刑は個別の諸事情を考慮して各別に決定される性質のものであるため、共犯者Aが併合罪として処断されている一方で被告人らが単一の強盗罪であるにもかかわらず同量の刑が言い渡されたとしても、それだけで平等原則に反するとはいえない。2. 原判決は第一審が認定しなかった住居侵入罪を新たに認定しているものの、言い渡した刑は懲役5年であり、第一審の刑と同一である。不利益変更禁止の原則は主文の刑の結果を重くすることを禁ずるものであり、認定事実に変更があっても、刑そのものが重くなっていない以上、同原則の禁止の範囲には抵触しない。
結論
1. 量刑の不均衡を理由とする憲法14条違反の主張は採用できない。2. 刑が加重されていない以上、罪名の追加認定は不利益変更禁止の原則に違反しない。上告棄却。
実務上の射程
不利益変更禁止の原則の「不利益」の判断基準が「刑の重さ」にあることを示した重要判例。答案上では、予備的訴因の追加や認定事実の変更があっても、刑を維持する限りは本条に反しないとする論理の根拠として活用できる。また、量刑の平等についても「被告人ごとの個別評価」を優先する実務的立場を裏付けるものである。
事件番号: 昭和26(れ)451 / 裁判年月日: 昭和26年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者間での量刑の不均衡が憲法上の公平な裁判に反するか、及び判決書における量刑理由の記載義務の有無について判断した。 第1 事案の概要:被告人と相被告人Aの量刑において、本来であれば相当の差異を設けるべき事情があったにもかかわらず、原審が両者に対して同一の刑期を言い渡した。弁護人は、この量刑の不均…
事件番号: 昭和24(れ)28 / 裁判年月日: 昭和24年5月31日 / 結論: 棄却
論旨は、原審は本件の併合罪につき法定の加重をするに當り、窃盜罪と強盜未遂罪との刑の輕重の比較において窃盜罪を重しとしてその刑に法定の加重をしているが、それは違法であるというのである。しかし、同時に刑を加重減輕すべきときには、併合罪の加重は、先だつて法律上の減輕をしなければならないことは、刑法第七二條の規定するところであ…
事件番号: 昭和39(あ)61 / 裁判年月日: 昭和39年7月14日 / 結論: 棄却
所論は、原判決は刑訴法第四〇二条の定める不利益変更禁止の原則に違反するとして、判例違反を主張するが、本件強盗殺人の法定刑のうち、第一審は無期懲役刑を選択、処断したものであるのに対し原審は死刑を選択し、第一審の認めなかつた被告人の犯行当時における心神耗弱の事実を認め、法定減軽の上無期懲役刑を宣告したものであることは各判文…