刑法第六六條により犯罪の情状憫諒すべきものとして酌量減輕を爲す場合は、酌量減輕を爲すに至つた判斷理由を判決に示す必要なきものであること當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第四〇八號、同年七月六日第三小法廷判決)
酌量減輕の理由を判示すことの要否
刑法66條,舊刑訴法360條2項
判旨
刑法66条に基づく酌量減軽を行う際、判決書にその判断理由を明示する必要はない。また、量刑は被告人ごとに個別的な事情を考慮して決定されるべきものであり、共同被告人との間に刑の軽重が生じても、直ちに不公平な判決とはいえない。
問題の所在(論点)
1. 酌量減軽(刑法66条)を適用する場合、判決書にその理由を記載する必要があるか。 2. 共同被告人の一人が酌量減軽を受け、他方との間に刑の差異が生じることは、判決の不公平を招き違法となるか。
規範
1. 刑法66条による酌量減軽は事実審の裁量に属し、判決書において減軽の基礎とした具体的理由を説示することは要しない。 2. 量刑は、被告人各人について個別的に犯罪の動機、情状、性格、その他諸般の事情を総合的に考慮して決定されるべきものである。したがって、共同被告人間の刑の均衡は絶対的なものではなく、刑の軽重に差異が生じることは許容される。
重要事実
被告人AおよびBは、共同正犯として起訴され、原審においてそれぞれ有罪判決を受けた。その際、被告人らは、判決書に酌量減軽の理由が具体的に示されていない点や、共同被告人との間で量刑に差がある点(不均衡)、さらには証人喚問の不実施が不当である点などを不服として上告した。
あてはめ
1. 酌量減軽の理由説示について:過去の判例(昭和23年(れ)第408号等)に照らし、酌量減軽は裁判所の裁量権に属するため、その判断プロセスを逐一判決書に記載する義務はない。 2. 共犯者間の量刑不均衡について:量刑は被告人各人の個別的情状(動機、性格等)に基づき決定される性質のものである。本件においても、各被告人の事情を考慮した結果として刑に差が生じることは当然にあり得ることであるから、直ちに不公平とは認められない。 3. 証拠調べの裁量について:原審が証人を喚問しなかったことは事実審の専権事項であり、記録上も実験則に反する事情は認められない。
結論
上告棄却。酌量減軽の理由説示は不要であり、個別事情に基づく量刑の結果として共犯者間に刑の軽重が生じても、量刑の不当や不公平の問題は生じない。
実務上の射程
量刑不当を主張する際、共犯者との「均衡」のみを理由にすることは困難であることを示している。答案上は、罪刑均衡原則や平等原則の観点から量刑を論じる際に、あくまで被告人個人の個別的情状(主観的・客観的事情)を重視すべきとする根拠として活用できる。また、判決書の理由不備の論点において、酌量減軽が例外であることを示す際にも参照される。
事件番号: 昭和26(れ)451 / 裁判年月日: 昭和26年10月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共犯者間での量刑の不均衡が憲法上の公平な裁判に反するか、及び判決書における量刑理由の記載義務の有無について判断した。 第1 事案の概要:被告人と相被告人Aの量刑において、本来であれば相当の差異を設けるべき事情があったにもかかわらず、原審が両者に対して同一の刑期を言い渡した。弁護人は、この量刑の不均…
事件番号: 昭和24(れ)369 / 裁判年月日: 昭和24年5月24日 / 結論: 棄却
しかし、強盜犯人と意思連絡のもとに見張等をした者は、右共犯者の行爲を利用して自己の犯意を實現したものであつて、共同正犯にほかならぬこと、當第三小廷にもその判例がある。(昭和二三年(れ)第三五一號、同年七月二〇日判決)