原決定は被告人の死亡により本件公訴を棄却したものであるから、これに對しては、被告人又は原審辯護人からは、上訴をすることができないものといわなければならない。
公訴棄却の決定と原審辯護人の上訴の可否
舊刑訴法365條1項2號,裁判所法7條2號
判旨
被告人の死亡により公訴棄却の決定がなされた場合、被告人または弁護人は当該決定に対して上訴をすることができない。
問題の所在(論点)
被告人の死亡による公訴棄却決定に対し、被告人または弁護人が上訴(抗告)を申し立てることは許されるか。
規範
被告人の死亡を理由とする公訴棄却の決定(旧刑訴法407条、365条)がなされた場合、被告人または原審弁護人はこれに対して上訴をすることはできない。また、最高裁判所に対しては裁判所法7条2号に基づき、訴訟において特に定める抗告のみが可能であるが、本件のような公訴棄却決定に対する抗告はこれに該当しない。
重要事実
被告人が死亡したため、原審は公訴棄却の決定を行った。しかし、弁護人に送達された決定謄本には「本件控訴は、之を棄却する。」との誤記があった。弁護人はこの決定を不服として抗告を申し立てたが、裁判所書記の添書等から原決定の実体は公訴棄却であると判断された。
事件番号: 昭和34(す)325 / 裁判年月日: 昭和34年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再審請求棄却決定に対する即時抗告を棄却した高等裁判所の決定に対し、最高裁判所へ上告または抗告を申し立てることは、法律に特別の規定がない限り不適法である。 第1 事案の概要:申立人は、大正時代に有罪判決が確定した事件につき、昭和32年に再審請求を行った。横浜地方裁判所が再審請求を棄却し、これに対する…
あてはめ
原決定は被告人の死亡を理由に公訴を棄却したものである。謄本上の「控訴棄却」という記載は明らかな誤記であり、その実質は旧刑訴法に基づく公訴棄却である。公訴棄却は訴訟条件の欠如により手続を打ち切る裁判であり、被告人の死亡によって訴訟主体が消滅している以上、被告人側から不服を申し立てる余地はない。また、現行法上の特別抗告等に相当する道も、本件のような公訴棄却決定については法律上の定めがないため認められない。
結論
本件抗告は、上訴権のない者による申し立て、または不適法な申し立てとして、理由がないものとされ棄却される。
実務上の射程
刑事訴訟法における「上訴の利益」の観点から重要である。被告人死亡による公訴棄却(刑訴法339条1項4号参照)は、被告人にとって不利益な裁判ではないため、無罪を求めて争うための上訴は認められないという原則を示す。実務上、決定謄本の誤記があっても、決定の性質自体が公訴棄却である限り、上訴権は発生しない点に留意すべきである。
事件番号: 昭和44(あ)1916 / 裁判年月日: 昭和44年10月1日 / 結論: その他
本件につき、昭和四四年八月一二日広島高裁が言い渡した判決に対し、検察官から上告の申立があつたところ、戸籍謄本によれば、被告人は同年七月三一日に死亡したことが明白であるから、刑訴法四一四条、四〇三条一項、四〇四条、三三九条一項四号に従い、公訴棄却の決定をなすべきものとする。(上告趣意書は提出させていない)
事件番号: 昭和53(し)57 / 裁判年月日: 昭和53年10月31日 / 結論: 棄却
公訴棄却の決定に対しては、被告人・弁護人からその違法・不当を主張して上訴することはできない。
事件番号: 昭和44(し)39 / 裁判年月日: 昭和44年7月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴訟条件の存在を肯定し公訴棄却の裁判をしない旨の決定に対しては、終局裁判に対する上訴により不服を申し立てることができるため、刑訴法433条1項に基づく特別抗告を申し立てることはできない。 第1 事案の概要:本件において、下級審(裁判所)は訴訟条件が存在すると判断し、公訴棄却の裁判をしない旨の決定を…
事件番号: 昭和51(す)254 / 裁判年月日: 昭和51年12月21日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】上告棄却決定に対する異議申立中に被告人が死亡した場合、裁判所は刑訴法339条1項4号を準用し、公訴棄却の決定をすべきである。 第1 事案の概要:被告人Aに対する公職選挙法違反被告事件について、最高裁判所が昭和51年11月12日に上告棄却決定を下した。これに対し、申立人らから異議の申立てがなされ、事…