裁判所が公判手續において、事實審理に入るに先立つて、公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰法令が違憲無効であるか否かについて、豫めその判斷を示さなくても、憲法の規定又はその精神に反するものでないことは當裁判所の判例とするところである。
事實審理に入るに先立ち公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰法令が違憲無効であるか否かについての判斷明示の要否
憲法37條1項,舊刑訴法348條
判旨
裁判所が公判手続において、事実審理に入るに先立って公判請求書記載の罰則規定が違憲無効か否かの判断を示す必要はない。あらかじめ判断を示さないまま事実審理に入ったとしても、憲法に違反するものではない。
問題の所在(論点)
裁判所は、刑事訴訟の事実審理に入る前に、適用される刑罰法令の違憲性についてあらかじめ判断を示す義務を憲法上負うか。
規範
裁判所は、公判手続において、事実審理に入るに先立ち、公判請求書に記載された罪名の基本となる刑罰法令が違憲無効であるか否かについて、あらかじめその判断を示す義務を負わない。
重要事実
被告人が起訴された事案において、原裁判所の公判で裁判長が罰則規定(制令)の違憲無効性について判断を示さずに事実審理を開始した。これに対し、被告人側が、事実審理に先立って違憲性の判断を示さないことは憲法に違反する旨を主張して抗告した。
事件番号: 昭和23(つ)26 / 裁判年月日: 昭和23年11月5日 / 結論: 棄却
一 裁判所が事實審理に先だち或る法令の適憲有効を認識していたとしても、それをもつて「直ちに有罪の豫斷を抱くもの」と速斷することは許されない。したがつて、それを以て憲法第三八條及び第三七條に違反するものと云うことはできない。 二 裁判所が公判手續において事實審理に入るに先立つて、公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰…
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判例(昭和23年11月15日決定)を引用し、刑事裁判の公判手続における判断の順序について判示する。裁判所が事実審理に先立って法令の違憲無効に関する判断を示さなくても、それは憲法の規定や精神に反するものではないと評価される。したがって、本件において裁判長が違憲判断を示さずに審理を進めたことは正当である。
結論
事実審理に先立って違憲判断を示す必要はなく、原審の判断は憲法に違反しないため、本件抗告を棄却する。
実務上の射程
刑事手続における審理の順序に関する判例である。違憲の抗弁が提出された場合であっても、裁判所は終局判決においてその判断を示せば足り、中間的な決定等で先行して判断を示す必要がないことを確認する際に参照すべきである。
事件番号: 昭和23(つ)29 / 裁判年月日: 昭和23年11月29日 / 結論: 棄却
裁判所が公判手續において事實審理に入るに先立つて、公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰法令が違憲無効であるか否かについては、たとい、被告人、辯護人又は檢察官からその判斷の開示の請求があつた場合においても、先ずその判斷を示すことを要しないものと解するを相當とする。けだし、刑事訴訟法にはかかる判斷を先ず示すことを要す…
事件番号: 昭和23(つ)36 / 裁判年月日: 昭和24年1月18日 / 結論: 棄却
一 裁判所は、公判手続において、事實審理に入るに先立つて、公判請求書に記載された罪名の基本である、刑罰法令が違憲無効であるか否かについて、たとい被告人、辯護人又は檢察官からその判斷の開示の請求があつた場合においても、先づその判斷を示すことを要しない。 二 裁判所が公判手続において、事實審理に入るに先立つて、公判請求書に…
事件番号: 昭和23(つ)15 / 裁判年月日: 昭和23年9月27日 / 結論: 棄却
裁判所が公判手続において事実審理に入るに先立つて起訴状に記載された罪名の根拠となる刑罰法令が効力を有するか否かということについて判断を示すことを要する旨の刑事訴訟法の規定は存しないし、又憲法の規定若しくはその全趣旨からもかかる要請があるものとは認められない。そしてこの理はその刑罰法令が本件で問題となつた昭和二三年政令第…
事件番号: 昭和24(つ)50 / 裁判年月日: 昭和24年7月27日 / 結論: 棄却
裁判所は公判手續において、事實審理に入るに先立つて、被告人又は辯護人から公判請求書に記載された罪名の基本である刑罰法令が違憲無効であるか否かについてその判斷開示の請求があつた場合においても、先づその判斷を示すことを要しないし、また裁判所が右の如き判斷を示すことなく事實審理に入ることをもつて、所論の如く、「有罪の豫斷を抱…