所論はいずれも憲法違反を理由とするものでないこと明白であるから、再上告の適法な理由となり得ない。(昭和二三年(れ)第四四六號同年七月二九日大法廷判決參照)。
憲法違反を理由としない主張と再上告の適否
刑訴應急措置法17條
判旨
判決書の誤記や法令適用の不当を主張する上告趣意は、憲法違反を理由とするものではないため、刑訴応急措置法17条所定の適法な再上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
判決書における文言の誤記の指摘、および実体法規の不当な適用(擬律の誤り)の主張が、刑訴応急措置法17条所定の適法な再上告理由である「憲法違反」に該当するか。
規範
再上告が適法であるためには、刑訴応急措置法17条に基づき、憲法違反を具体的理由として主張していることを要する。判決文中の明らかな誤記の指摘や、実体法規の解釈・適用に関する不服申し立ては、憲法上の問題を含まない限り、再上告の理由とは認められない。
重要事実
被告人が刃渡り14.5センチメートルの匕首(あいくち)を不法に携帯した行為に対し、銃砲火薬類取締法等の関係法令が適用された。これに対し弁護人は、①判決書中の「罰金」を「罪金」、「銃砲」を「銃法」とした誤記の存在、および②適用法令の解釈を誤り、本来罪とならないはずの匕首の携帯を処罰した法令適用の不当を理由として再上告を申し立てた。
事件番号: 昭和23(れ)1593 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
改正前の刑法第五五條の連続一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段、方法その他の事實を具體的に判示する外、その連続した行爲の始期、終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪で被害者又は賍額に異同があるときは被害者中或る者の氏名を表示する等こ…
あてはめ
まず、①の判決書の字句上の誤記(「罪金」「銃法」)は、判決の結論や憲法判断に影響を与えるものではなく、憲法違反の主張とはいえない。次に、②の匕首の携帯に関する法令適用の不当についても、単なる実体法の解釈・適用の誤りを主張するに過ぎず、それが直ちに憲法規定に抵触することを具体的に論じるものではない。したがって、これらの主張はいずれも憲法違反を理由とするものとは認められない。
結論
本件再上告は、刑訴応急措置法17条所定の要件を具備しない不適法なものであるため、棄却を免れない。
実務上の射程
旧刑事訴訟法下における再上告理由の限定性を示す判例であるが、現行法下(刑訴法405条、406条)においても、単なる事実誤認や法令違反が直ちに上告理由とならない原則を理解する上で資する。特に、判決書の軽微な誤記(正誤の明白なもの)が上告理由にならないという実務上の常識を確認する際に参照される。
事件番号: 昭和26(れ)1092 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告趣意であっても、その実質が単なる量刑不当の主張に帰する場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、その主張内容を精査したところ、実質的には量刑が重すぎるという不服申し立てにすぎないものであった。 第2…
事件番号: 昭和26(れ)1333 / 裁判年月日: 昭和26年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反の主張が実質的に刑訴法411条の職権破棄事由の主張にすぎない場合、それは適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人が、原判決等に対して憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、その主張の具体的な内容は、憲法の抽象的な解釈を争うものではなく、実質的には原判決の事実誤認や…