改正前の刑法第五五條の連続一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段、方法その他の事實を具體的に判示する外、その連続した行爲の始期、終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪で被害者又は賍額に異同があるときは被害者中或る者の氏名を表示する等これによつてその行爲の内容が同一罪質を有する複數のものであることを知り得べき程度に具體的であれば足るものであることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第九二號、同年一二月四日第一小法廷判決昭和二三年(れ)七六三號、同二四年二月九日大法廷判決)
改正前の刑法第五五條の連続一罪を構成すべき行爲の内容を判示する程度
舊刑法55條,舊刑訴法360條1項
判旨
連続一罪を構成する数多の行為を判示するには、各行為を個別に具体化せずとも、共通の手段・方法、始期・終期、回数等を明らかにし、同一罪質の複数行為であると知り得る程度に具体的に判示すれば足りる。
問題の所在(論点)
数個の行為が連続して行われ一罪(連続一罪)を構成する場合において、裁判所が事実を認定する際、個々の行為の内容をどこまで具体的に特定して判示する必要があるか。特に刑罰権の範囲を特定するための事実摘示の程度が問題となる。
規範
包括一罪(連続一罪)の事実摘示においては、個々の行為を一々具体的に判示することを要しない。共通した犯罪の手段、方法その他の事実を具体的に判示するほか、連続した行為の始期、終期、回数等を明らかにし、財産犯等の場合は被害者の氏名(一部は員数でも可)や合算額を表示するなど、その内容が同一罪質を有する複数の行為であることを知り得る程度に具体的であれば足りる。
重要事実
被告人は物価統制令に違反し、統制額を超えた価格での買受けおよび販売をそれぞれ複数回にわたって連続して行った。原判決(二審)は、これらの数個の行為を連続一罪として判示する際、各個の行為を個別に特定するのではなく、一定の期間内における共通の手法や回数、総額等を示す形式で事実を認定した。これに対し、被告人側は判示の方法が具体的でなく違法であるとして上告した。
あてはめ
本件における原判決の事実判示は、物価統制令違反の買受けおよび販売の各行為について、共通の手段・方法を示し、かつ連続した行為の始期、終期、回数等を明らかにしている。また、これら判示された事実によって、行為の内容が同一の罪質を有する複数のものであることが十分に認識可能である。さらに、原判決が挙げた証拠を照合すれば、各行為の内容は具体的に判明する状態にあるといえる。したがって、個々の事実を個別に列挙せずとも、犯罪構成要件に該当する事実の特定として必要かつ十分な具体性を備えていると評価される。
結論
連続一罪の判示においては、各行為を個別に特定せずとも、始期・終期、回数、共通の態様等により行為の同一性と複数性が識別できる程度に示されていれば適法である。
実務上の射程
現行法下の包括一罪(常習犯や営業犯等)における訴因の特定および判決書での事実摘示の程度を検討する際の指標となる。もっとも、被告人の防御権行使に支障が生じる場合には、より個別具体的な特定が求められる余地がある点には留意を要する。
事件番号: 昭和23(れ)763 / 裁判年月日: 昭和24年2月9日 / 結論: 破棄差戻
刑法第五五條の削除せられた昭和二二年一一月十五日以後における複數の犯罪行爲を判示するには、その行爲が同一罪質であり、手段、方法等において共通した分子を持つものであつても、その各個の行爲の内容を一々具体的に判示し更に日時、場所等を明らかにすることにより一の行爲を他の行爲より區別し得る程度に特定し、以つて少くとも各個の行爲…
事件番号: 昭和23(れ)973 / 裁判年月日: 昭和23年11月4日 / 結論: 棄却
所論はいずれも憲法違反を理由とするものでないこと明白であるから、再上告の適法な理由となり得ない。(昭和二三年(れ)第四四六號同年七月二九日大法廷判決參照)。