一 連續犯の事實摘示に當り、その行爲の内容が同一罪質を有する複數のものであることが分る程度に具体的に判示されている以上、その行爲の回數が明示されていなくてもその判決は違法ではない。 二 公定價格超過販賣行爲の判示に當り、超過額を「約」何圓として、明細な計算の結果を示していなくても、その販賣價格を明記し、これに適用さるべき告示を示してその計算の基礎が明確にされている以上、かかる判決を違法ということはできない。
一 連續犯の判示に行爲の回數の記載を欠く判決の正否 二 公定價格超過販賣の超過額判示の程度
刑法55條(改正前),舊刑訴法360條1項,物價統制令3條1項
判旨
連続犯(一罪として処断されるもの)の犯罪事実の摘示は、その行為の内容が同一罪質を有する複数のものであることが分かる程度に具体的に判示されれば、回数の明示がなくても特定として十分である。
問題の所在(論点)
連続犯を認定する場合の犯罪事実の摘示において、行為の回数等の詳細が明示されていないことは、罪数や法令適用の観点から事実の特定に欠ける不備となるか。
規範
連続犯は一罪として処断されるべきものであるから、犯罪事実の摘示においては、行為の内容が同一罪質を有する複数のものであることが判別できる程度に具体的であれば足り、必ずしも行為の回数を明示する必要はない。証拠等と相まって行為が特定され、法令の適用に支障を来さない程度であれば、事実の特定として適法である。
重要事実
被告人が、営利目的で米の売買及び塩蔵鰯の販売等を行ったとして、食糧管理法違反等で起訴された事案。原判決は、複数の行為であることを明示しつつも、十月中旬頃から十一月初旬までの間の販売回数を具体的に数値で示さずに「何回かに分けて」と摘示した。また、売買価格の超過額についても「約」として明細な計算結果を直接示さなかった。被告人側は、犯罪事実の特定が不十分であり理由不備の違法があると主張して上告した。
あてはめ
原判決の事実摘示によれば、行為が複数のものであることは明瞭であり、かつ証拠説明と相まって、十月中旬頃から十一月初旬までの間に分割して行われた販売行為であることが客観的に把握できる。この程度の摘示があれば、行為の特定や法令の適用において何ら支障は生じない。また、超過額についても、計算の基礎となる価格や適用されるべき告示が明記されている以上、算定結果に「約」という表現が用いられていても、法令適用上の疑義は残らない。したがって、原判決の事実に不備はないと解される。
結論
犯罪事実の特定として十分であり、理由不備の違法はない。回数が明記されていなくても、行為の内容や時期が具体的に示され法令適用に支障がない限り、連続犯の判示として欠くるところはない。
実務上の射程
数個の行為が包括的に一罪(当時の連続犯規定)として扱われる場合における、訴因や判決書での事実摘示の程度に関する基準を示している。現代の包括一罪(常習犯等)の事実摘示においても、行為の概括的な特定で足りるとする実務の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和24新(れ)487 / 裁判年月日: 昭和25年4月14日 / 結論: 棄却
起訴状には、公訴事實として「被告人は豊橋市a町bc番地において、小麥粉の製粉業を營むものであるが、法定の除外事由がないのに拘らず營利の目的で昭和二四年三月一〇日頃右製粉工場等において、小麥粉約七五四瓩一〇〇瓦をその法廷の統制額を超えて販賣する目的にて所持して居たものであると記載し、適用すべき罰條として物價統制令第一三條…
事件番号: 昭和23(れ)1593 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
改正前の刑法第五五條の連続一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段、方法その他の事實を具體的に判示する外、その連続した行爲の始期、終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪で被害者又は賍額に異同があるときは被害者中或る者の氏名を表示する等こ…