數個の行爲が連續一罪として公判に付せられた場合において裁判所が各行爲について審理を遂げた上、そのうちの或行爲は有罪であると認めたときはその有罪の部分についてのみ主文において刑の言渡をなし、舊刑訴法第三六〇條所定の理由を付せば足り他の部分について特に無罪の言渡を爲すべきではなく且判決理由にこれを説明する必要もない。
連續一罪として起訴せられた數行爲の中或行爲につき有罪を言渡した場合他の行爲につき無罪言渡の要否
舊刑訴法360條1項,刑法55條(改正前)
判旨
連続一罪として公訴提起された数個の行為のうち、一部が有罪で他が犯罪の証明不十分である場合、主文で有罪の言渡しをし、理由でその旨を付せば足りる。犯罪の証明が不十分な部分について、主文で無罪の言渡しをしたり、判決理由で個別に説明したりする必要はない。
問題の所在(論点)
包括一罪の一部が有罪、他が不成立(証明不能)と判断される場合において、不成立部分について主文での無罪告知や理由中での説示を要するか。また、それがない場合に判断遺脱の違法(刑事訴訟法上の不備)が生じるか。
規範
数個の行為が包括一罪(連続一罪)として公判に付された場合、裁判所はその一部について有罪と認め、他の部分について犯罪の証明が不十分であると認めたときは、有罪部分についてのみ主文で刑の言渡しをなし、理由を付せば足りる。証明不十分な部分について、別途無罪の言渡しをしたり、理由中でその旨を説示したりすることは法律上の義務ではない。
重要事実
被告人らは、酒の密造を目的として米麦を闇買いすることを共謀し、A外5名から計8回にわたり米麦を買い受けたとして、物価統制令違反の連続一罪として公訴提起された。原判決は、このうち一部の事実を認定して有罪としたが、公訴事実の一部であった「Aからの買受け」等の事実については、判決文中で特段の判示をしていなかった。これに対し、弁護側が判断遺脱の違法があるとして上告した。
あてはめ
本件各買受行為は連続一罪として一つの訴訟客体を構成している。裁判所が審理を遂げた結果、一部の行為については有罪の証明があるが、他の行為(Aからの買受け等)については証明が不十分であると判断した場合、訴えられた一つの罪の中で有罪となるべき事実が特定されていれば、判決としてはその有罪部分を明示すれば足りる。理由中で不成立部分を説示することは妥当ではあるが、法律上の根拠に基づく義務とはいえない。したがって、原判決が一部事実について明示的に触れなかったとしても、判断遺脱には当たらない。
結論
包括一罪の一部が証明不能な場合、主文・理由ともにその部分について無罪の判示を要しない。原判決に判断遺脱の違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
包括一罪(常習犯、結合罪、本件のような連続一罪など)の審理において、起訴された犯罪事実の一部が認められない場合の判決書の書き方(主文・理由の構成)を規律する。実務上、訴因の一部が認められない場合でも、残りの部分で犯罪が成立する限り、その部分のみを認定すれば足り、不成立部分を理由中で「その余の点については証拠がない」等と付記することはあっても、主文で一部無罪を出す必要はないという原則を確認するものである。
事件番号: 昭和26(れ)1646 / 裁判年月日: 昭和29年2月25日 / 結論: 破棄自判
原判決は、被告人が小麦又は小麦粉を統制額を超過する代金をもつて売買した判示数個の事実を認定する証拠として被告人の第一審公判廷における供述、各売渡始末書記載、陳述書(写)、各買受始末書記載を挙げているが、右認定事実中主文第五項掲記の部分については、被告人の第一審公判廷における自白以外にこれを補強するに足る証拠は示されてい…