刑法第五五條の削除せられた昭和二二年一一月十五日以後における複數の犯罪行爲を判示するには、その行爲が同一罪質であり、手段、方法等において共通した分子を持つものであつても、その各個の行爲の内容を一々具体的に判示し更に日時、場所等を明らかにすることにより一の行爲を他の行爲より區別し得る程度に特定し、以つて少くとも各個の行爲に對し、法令を適用するに妨げなき限度に判示することを要するものといわねばならぬ。
刑法第五五條削除の日以後の複數の犯罪行爲を判示する方法
刑法55條,舊刑訴法360條1項
判旨
連続一罪の規定廃止後において、複数の犯罪行為につき有罪判決を下す場合は、各個の行為を一の行為と区別できる程度に、日時・場所等を具体的に判示して特定しなければならない。
問題の所在(論点)
旧刑法55条(連続一罪)の廃止後において、同一罪質かつ同様の手法で行われた複数の犯罪行為を「罪となるべき事実」として判示する場合に要求される特定の程度。
規範
刑訴法335条1項(旧刑訴法360条1項)が定める「罪となるべき事実」とは、犯罪構成要件に該当する具体的事実であり、法令適用の基礎となるべき事実を指す。連続一罪の規定が削除された後は、複数の犯罪行為を判示する場合、同一罪質かつ手段・方法に共通性があるとしても、各個の行為の内容を一々具体的に判示し、日時・場所等を明らかにすることによって、一の行為を他の行為から区別し得る程度に特定し、少なくとも各個の行為に対し法令を適用するに妨げない限度で判示しなければならない。
重要事実
被告人は、徳島県水産業会の鮮魚課長として、法定の除外事由がないにもかかわらず、昭和23年2月20日頃から同月23日頃までの間に、複数名に対し、鮮魚(ぶり)を法定の統制額を超過した価格で販売したとして物価統制令違反に問われた。原判決は、複数の販売行為に共通する始期と終期のみを掲げ、個別の犯罪事実については別表に譲っていた。しかし、その別表には日時や回数等の記載がなく、各買受人に対する売渡行為が同時になされたのか、数回に分けてなされたのかも不明な状態であった。
あてはめ
本件における原判決の判示は、単に複数の行為に共通する始期と終期を掲げるに留まり、別表においても各販売行為の日時や回数が特定されていない。これでは、各販売行為が個数としてどのように成立しているのか、一の行為を他の行為から区別して特定することができないといえる。したがって、個々の行為に対して法令を適用すべき基礎となるべき事実が確定されているとは解されず、法令適用の基礎を欠くものといわざるを得ない。
結論
原判決の判示は判決の理由を具備しない違法(理由不備)があり、破棄を免れない。
実務上の射程
併合罪(刑法45条)となるべき複数の実行行為を判示する際の「事実の特定」の基準を示す。特に包括一罪として処理できない事案において、各行為を個別に認定・特定しなければならないという実務上の鉄則を確認するものである。
事件番号: 昭和23(れ)1593 / 裁判年月日: 昭和24年4月14日 / 結論: 棄却
改正前の刑法第五五條の連続一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することを要せず數多の行爲に共通した犯罪の手段、方法その他の事實を具體的に判示する外、その連続した行爲の始期、終期、回數等を明らかにし且つ財産上の犯罪で被害者又は賍額に異同があるときは被害者中或る者の氏名を表示する等こ…