一 裁判所法施行法第二條及び同法施行令第三條第一項、第二項第二號の規定が憲法第一三條、第一四條、第三二條及び第七六條第二項等に違反するものでないことは既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六七號同年七月一九日大法廷判決)とするところである。 二 憲法第三七条を根據として第三者の供述を證據とするには反對訊問の機會を與うべきものであり聽取書又は供述に代わるべき書面をもつて證人に代えることは絶對に許されないと斷定することはできないことは既に當裁判所の判例(昭和二三年(れ)第一六七號同年七月一九日大法廷判決)とするところであるから、刑訴應急措置法第一二條が憲法第三七條に違反するという論旨は理由なきものである。 三 憲法第三七條第一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは偏頗や不公平のおそれのない組織構成をもつた裁判所による裁判を意味するもので個々の事件につきその内容實質が具體的に公正妥當な裁判を指すものでないことは既に當裁判所の判例とするところである。
一 裁判所法施行法第二條及び同法施行令第三條の合憲性 二 刑訴應急措置法第一二條の合憲性 三 憲法第三七條第一項にいわゆる公平な「裁判所の裁判」
裁判所法施行法2條,裁判所法施行令3條,憲法13條,憲法14條,憲法32條,憲法76條2項,憲法37條,憲法27條1項,刑訴應急措置法12條
判旨
憲法37条1項にいう「公平な裁判所」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織構成をもつ裁判所を意味し、個々の事件の内容実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものではない。
問題の所在(論点)
刑事被告人に保障される憲法37条1項の「公平な裁判所」の意義は、具体的判決の内容が公正妥当であることをも含むか。
規範
憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判官が被告人と特殊な関係にあったり、事件に予断を抱いたりするなど、偏頗や不公平のおそれのない組織・構成をもつた裁判所による裁判を意味する。したがって、個々の事件における判決の内容や実質が、具体的・客観的に見て公正妥当であるか否かという問題は、同条の「公平な裁判所」の意義には含まれない。
重要事実
被告人は、裁判所構成法施行下の昭和22年に起訴され、第1審(東京区裁判所)で判決を受けた後、検察官及び被告人の控訴により事件が第2審(東京刑事地方裁判所)に係属していた。その間に日本国憲法及び裁判所法が施行された。本件は、刑事訴訟法応急措置法に基づき、東京地方裁判所が第2審として審判し、東京高等裁判所がその上告審として審判を行ったものである。被告人は、第2審において懲役1年の実刑を科した判決を是認した原判決が、憲法37条1項に違反すると主張して上告した。
あてはめ
被告人は、第2審が懲役1年の実刑を科したこと(量刑等の実質的内容)が不当であり、憲法が保障する公平な裁判に反すると主張する。しかし、憲法37条1項の趣旨は、裁判所の組織的な中立性・独立性を担保することにある。本件において、審理を行った裁判所の組織構成自体に不公平な疑いがあるような事実は認められず、単に判決の内容実質が被告人にとって不利益であるという不満は、同条のいう「不公平」には当たらないといえる。
結論
憲法37条1項の「公平な裁判所」とは、裁判所の組織・構成の公平性を指すものであり、本件のような判決内容への異議は同条違反とはならない。
実務上の射程
裁判官の忌避・回避などの組織的公正性が問題となる場面での定義として引用される。判決の「内容」が不当である場合には、実体法の解釈誤りや量刑不当として争うべきであり、憲法37条1項の問題としては構成できないことを示す際に有用である。
事件番号: 昭和26(れ)2242 / 裁判年月日: 昭和27年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条1項が保障する「公平な裁判所の裁判」とは、裁判所の構成等において偏頗の恐れがない裁判を指す。被告人に対する量刑が共犯者等の他被告人と比較して重いとしても、直ちに不公平な裁判にあたるわけではない。 第1 事案の概要:被告人A(B)、C、D、Eらは刑事事件で起訴され、原審において有罪判決を受…