一 明示の意思の表示が無くても暗默にでも意思の連絡があれば共謀があつたといい得るのである。 二 公判外の自白と雖適法の證據調を經たものはこれを證據と爲し得ること勿論である。 三 原審の判示する處によれば判示被害者の死亡は被告人兩名の共謀による暴行の結果として發生したものであるから直接死因となつた暴行をした者がたとえ所論の如く被告人Aであつたとしても、共謀者たる被告人Bも亦右死亡に付き刑責を負わなければならないものである。 四 犯人が假りに自首したとしても自首による刑の減輕をするか否かは裁判所の自由彩量に委ねられていることであるから此點に關する論旨は上告の理由とならない。
一 暗默の意思の連絡による共謀 二 公判外の自白の證據能力 三 致死の結果に對する暴行共謀者の責任 四 自首減輕と裁判所の自由裁量
刑法60條,刑法205條,刑法42條,憲法38條第3項,刑訴應急措置法10條第3項
判旨
共謀共同正犯が成立するためには、明示の意思表示がなくても、黙示的な意思の連絡があれば足りる。また、共謀に基づく暴行の結果として死の証(死亡)が発生した場合、直接の暴行を加えた者のみならず、共謀者全員がその結果について刑事責任を負う。
問題の所在(論点)
1. 明示的な合意がない場合でも、刑法60条の共謀が成立するか。2. 共謀に基づく暴行により被害者が死亡した場合、直接の加害行為を行っていない共謀者も死亡の結果について責任を負うか(結果的加重犯の共同正犯)。
規範
1. 刑法60条の「共謀」は、必ずしも明示的な意思表示を要せず、暗黙のうちになされる意思の連絡(黙示の共謀)であっても認められる。2. 数人が共謀して暴行を行い、その結果として被害者が死亡した場合、直接死因となった暴行を行った者が誰であるかにかかわらず、共謀者全員が死亡の結果について共同正犯としての責任を負う。
重要事実
被告人Aおよび被告人Bは、相互に意思の連絡(共謀)を持った上で、被害者に対して暴行を加えた。その暴行の結果として被害者は死亡するに至った。弁護側は、直接の死因となった暴行を加えたのが被告人Aのみである場合、被告人Bは死亡の結果について責任を負わないと主張したほか、正当防衛の成立や、明示の共謀の欠如を理由に上告した。
あてはめ
1. 被告人らの間には、明示の意思表示はなかったものの、原審が認定した証拠によれば、暗黙のうちに犯罪を共同して実行しようとする「意思の連絡」があったと認められる。したがって、共謀の成立に欠けるところはない。2. 被害者の死亡は、被告人両名の共謀に基づく一連の暴行の結果として発生したものである。したがって、たとえ直接の死因となった特定の暴行を被告人Aのみが行ったとしても、共謀に基づき暴行に関与した被告人Bもまた、共謀共同正犯として被害者の死亡という結果について刑責を免れない。
結論
被告人両名に共謀が認められ、その共謀に基づく暴行から死亡の結果が生じた以上、直接の加害者であるか否かを問わず、被告人Bも死亡の結果について共同正犯としての責任を負う。上告棄却。
実務上の射程
黙示の共謀の成立を認めた初期の重要判例であり、実務上、実行行為への分担が直接死因に直結しない者であっても、共謀が認められる限り結果全体について責任を負う(結果的加重犯の共同正犯)という法理を明確にしている。答案上では、共謀の認定(意思の連絡)および共同正犯の責任の帰属範囲を論じる際の基礎として引用すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)4872 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同正犯が成立するためには、共犯者間において特定の犯罪を実行する旨の意思の連絡(共謀)があることを要する。本判決は、証拠に基づき被告人と他の共犯者との間に暴行の意思連絡があったと認められる以上、刑法60条の適用は正当であるとした。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者AおよびBと共に、被害者Cに対し…