裁判所が証拠により或る間接事実を認め、次いでその事実に基ずき直接事実を推認したとしても何等証拠法則に違背するものでないことは多言を要しないところであり(昭和二三年(れ)第七九九号同年一一月一六日第三小法廷判決集二巻一二号一五四九頁参照)、また伝聞証拠と雖も旧刑訴法の下においてその間接証拠なるの故を以て直ちにその証拠能力又は証拠力を否定すべきでないこと勿論であるから(昭和二四年(れ)第二三六号同年一二月三日第三小法廷判決集三巻一二号一八七〇頁参照)、原判決には所論のような違法はない。
証拠により認定した事実に基ずく推認の証拠力と旧刑訴法の下における伝聞証拠の証拠力
旧刑訴法336条,旧刑訴法337条
判旨
共謀共同正犯の成立には、現場の状況から生じた黙示的な意思の合致があれば足り、間接事実の積み重ねによってその事実を推認することは証拠法則に違背しない。
問題の所在(論点)
刑法60条の共謀の認定において、具体的な共謀の合意を裏付ける直接証拠がない場合に、現場の状況から推認される「相共力して実行する決意」をもって共謀の存在を認定できるか。
規範
刑法60条の共同正犯における「共謀」は、あらかじめ綿密な計画がなされる必要はなく、現場の状況に応じて互いに他人の行為を利用し、自己の目的を達しようとする黙示的な意思の合致があれば足りる。また、直接証拠が乏しい場合であっても、裁判所が証拠に基づき複数の間接事実を認定し、それらを総合して共謀という直接事実を推認することは、証拠法則上許容される。
重要事実
被告人およびA某らは、現場で友人Cと被害者Bとの間に喧嘩口論が始まった際、Bおよびその配下の者が被告人らに対し暴行を加えようとする気配を感じた。そこで、被告人らはCを助け、Bらに対抗するために相共力して暴行を加えようと決意し、判示の暴行傷害に及んだ。被告人側は、A某との共謀を認めるに足りる証拠がないと主張して上告した。
あてはめ
本件では、被告人らと被害者側の対立関係、現場での一触即発の状況、および被告人らが共通の知人であるCを援助しようとした動機が認められる。これらの間接事実を総合すれば、被告人らが現場で瞬時に「相共力して暴行をしようと決意」したとみるのが合理的である。このような黙示的な意思の合致は共謀に該当し、間接事実からの推認過程にも不合理な点はないため、共同正犯の成立が認められる。
結論
被告人とA某らの間には、現場の状況に起因した黙示的な共謀が成立しており、刑法60条の共同正犯として処断される。上告棄却。
実務上の射程
現場共謀(黙示的共謀)の典型例を示す。事前の計画がない突発的な喧嘩や暴行事案において、犯行現場での各加害者の動機、関係性、挙動といった間接事実から「相共力する決意」を認定する際の論理構成として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)4872 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同正犯が成立するためには、共犯者間において特定の犯罪を実行する旨の意思の連絡(共謀)があることを要する。本判決は、証拠に基づき被告人と他の共犯者との間に暴行の意思連絡があったと認められる以上、刑法60条の適用は正当であるとした。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者AおよびBと共に、被害者Cに対し…
事件番号: 昭和43(あ)1470 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者であっても刑法60条の共同正犯としての責任を負い、これは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の犯罪に関する共謀に加担した。共謀に基づき一部の者が実行行為を行ったが、被告人ら自身…