一 論旨は、「本件は同時にしかも極めて短時間内に十數名入り亂れての鬪爭の結果發生した傷害事件であつて各傷害行爲の間に連續觀念を容るべき時間的間隔がない。從つて之に對する罰條の適用は單一行爲に基く事犯と爲すべきである」と主張するのである。しかし、右判示事實は、要するに被告人等がA及び同Bの兩名に對して相次いで幾多の暴行と傷害とを與え、その傷害の結果遂にBをして死亡せしめたというのであるから、その暴行及び傷害行爲の間に時間的間隔の存在したことは明白であつて、社會通念の上から見ても一個の行爲で同時に右兩名に對し傷害を與えたと爲すべきではなく、むしろ連續した數個の傷害行爲があつたと見るのを相當とする。されば、原審が判示事實に對し連續犯の法條を適用したのは當然である。 二 多衆一團となつて他人に暴行を加えることを謀議したものが、偶々犯行現場におくれて到着したため、又はその現場にいながら、直接實行行爲に加擔しなかつたしても、他の共謀者の實行行爲を介して自己の犯罪敢行を實現したものと認められるときは、その集團暴行に基く傷害乃至傷害致死の罪につきなお共同正犯たるの責を負うべきである。 三 刑の執行猶豫の言渡を爲すか否かを事實審である原審の自由裁量に委ねられているところであるから、原審がそれをしなかつたからといつて、上告適法の理由とならない。
一 短時間の集團的鬪爭と傷害の連續犯 二 暴行傷害の實行行爲を分擔しなかつた共謀者の責任 三 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことと上告理由
刑法204條,刑法205條,刑法55條,刑法60條,刑法25條,刑訴應急措置法13條2項
判旨
共謀者が現場に遅参し、または現場にいながら直接の実行行為に加担しなかった場合でも、自己の犯罪敢行の意思を他者の行為を介して実現したと認められるときは、共同正犯の責任を負う。
問題の所在(論点)
共謀共同正犯の成否に関し、共謀に加わりながら現場での直接的な実行行為を行わなかった者、あるいは現場に遅参した者に共同正犯としての責任を認めることができるか。
規範
多衆一団となって暴行を謀議した者が、犯行現場に遅れて到着し、あるいは現場にいながら直接の実行行為に加担しなかった場合であっても、他の共謀者の実行行為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認められるときは、刑法60条の共同正犯としての責任を負う。
重要事実
暴力団排除を標榜する団体のメンバーである被告人らは、仲間が相手方から暴行を受けたことに憤慨し、徹底的な膺懲(殴り込み)を共謀した。被告人Fは「責任は俺が負う」と絶叫して激励し、被告人Gも同様に鼓舞して一団で相手方宅へ押し寄せた。現場において、他の共謀者らは木材等で相手方に暴行を加え死傷させたが、被告人Fは現場に遅参し、被告人Gは現場にいながら直接手を出さなかった。
あてはめ
被告人らは、いずれも指導的地位にあって殴り込みを謀議し、一団となって犯行を敢行している。被告人Fは遅参し、被告人Gは現場で直接手を下していないものの、両名の言動は他の共謀者らを鼓舞・激励するものであり、他の共謀者の実行行為を介して自己の犯罪敢行の意思を実現したものと認められる。したがって、単なる教唆にとどまらず、共謀共同正犯としての性質を有する。また、複数の被害者に対し相次いで行われた暴行・傷害は、時間的間隔がある以上、社会通念上一個の行為とはいえず、数個の罪を構成する(※判決当時の連続犯規定の適用を是認)。
結論
被告人らは、直接の実行行為に加担していない場合であっても、傷害及び傷害致死罪の共同正犯としての責任を負う。
実務上の射程
いわゆる「共謀共同正犯」の成立を大法廷で初めて認めたリーディングケースである。実行行為の分担がない者であっても、共謀に基づき他者の行為を「自己の犯罪」として利用したといえる場合には、60条の正犯性が認められるとする判断枠組みは現在の実務の基礎となっている。
事件番号: 昭和23(れ)742 / 裁判年月日: 昭和23年11月30日 / 結論: 棄却
一 明示の意思の表示が無くても暗默にでも意思の連絡があれば共謀があつたといい得るのである。 二 公判外の自白と雖適法の證據調を經たものはこれを證據と爲し得ること勿論である。 三 原審の判示する處によれば判示被害者の死亡は被告人兩名の共謀による暴行の結果として發生したものであるから直接死因となつた暴行をした者がたとえ所論…
事件番号: 昭和43(あ)1470 / 裁判年月日: 昭和44年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共謀共同正犯成立に必要な共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない共謀者であっても刑法60条の共同正犯としての責任を負い、これは憲法31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人AおよびBは、特定の犯罪に関する共謀に加担した。共謀に基づき一部の者が実行行為を行ったが、被告人ら自身…