一 死刑の規定が憲法に違反するものでないことは既に當裁判所の判例(昭和二二年(れ)第一一九號同二三年三月一二日大法廷言渡)の示した通りであつて今なおこれを改める必要を認めない。 二 論旨は原判決が被告人に死刑を科しながらそれに相當する犯情を具體的に判示しなかつたことを違法として非難している。しかし所論のような犯情を判文の上に説明する必要はないから、原判決がこれをしなかつたとしても何等違法ではない。
一 死刑の規定の合憲性 二 死刑の相當犯情判示の要否
憲法13條,憲法36條,刑訴法360條1項
判旨
死刑制度は憲法13条及び36条に違反せず、判決書において死刑を選択するに足る具体的な犯情を詳細に説示することは法律上の義務ではない。
問題の所在(論点)
1.死刑制度は憲法13条(生命権の保障)および36条(残虐な刑罰の禁止)に照らして合憲か。 2.死刑を宣告する際、判決書に死刑選択の根拠となる具体的な犯情を明示する必要があるか(量刑理由の記載義務の範囲)。
規範
1.死刑の規定は、憲法13条(個人の尊重・生命権)及び36条(残虐な刑罰の禁止)に違反しない(昭和23年3月12日大法廷判決参照)。 2.死刑を選択する場合であっても、判決文においてその選択を正当化する具体的な犯情を特段に説明する必要はない。
重要事実
被告人は死刑の判決を受けたが、これに対し、(1)死刑制度そのものが憲法13条・36条に違反すること、(2)原判決が死刑を科しながらそれに相当する犯情を具体的に判示していないことが違法であること、を理由に上告した。
あてはめ
1.憲法適合性について、死刑規定が憲法に違反しないことは既に確立された大法廷判例の示すところであり、本件においてもこれを変更する特段の事情は認められない。 2.判決の記載内容について、被告人の犯した罪に対して死刑を選択した以上、判決書において死刑を科すに足りる犯情を個別に詳細に説明し、説得を行うことは法律が要求する判決の要件ではない。したがって、これを行わなかったとしても刑事訴訟法上の違法は存在しない。
結論
死刑制度は合憲であり、死刑宣告にあたって犯情の具体的な説明が欠けていても判決に違法はない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
死刑の合憲性を前提とした上で、量刑理由の記載の程度に関する判例である。現代の刑事裁判実務(永山基準以降)では死刑選択の理由を極めて慎重に説示することが定着しているが、本判決は法理論上の最小限の記載義務の範囲を示したものとして整理される。
事件番号: 昭和44(あ)689 / 裁判年月日: 昭和44年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条に違反せず、またその適用の結果として生じる差異も不合理な差別を伴わない限り憲法14条に違反しない。被告人の経歴や犯行態様の重大性を勘案して死刑を維持した判断は正当である。 第1 事案の概要:被告人が犯した殺人等の犯罪事実(詳細は判決文からは不明)に対し、第一審が死刑を宣告した。…