被告人に執行猶豫を與えるか否かは、當該事件の一切の具體的事情を斟酌し、情状に因り決すべきものであつて事實審である原審の自由裁量權に屬する事柄である。そしてもとより法律上刑の減免たる事由に關するものでない。從つて執行猶豫を與えなかつた場合において、その理由を説示しないからといつて何等の違法はない。
執行猶豫を與えない理由判示の要否
刑法25條,刑訴法360條2項
判旨
執行猶予の付与は事実審の広範な裁量に属する事項であり、裁判所が執行猶予を付さない場合において、判決書にその理由を説示する必要はない。
問題の所在(論点)
裁判所が判決において執行猶予を付与しない場合に、その理由を説示する必要があるか。刑罰の量定および執行猶予の裁量権の範囲と、判決の理由説示義務の要否が問題となる。
規範
被告人に執行猶予を認めるか否かは、当該事件の一切の具体的事情を斟酌し、情状により決定すべき事項であり、事実審の広範な自由裁量権に属する。また、執行猶予を付さないことは、刑の減免事由(刑法66条等)には該当しない。
重要事実
被告人Aに対し、原審は実刑判決を言い渡したが、その際、執行猶予を付与しない理由についての具体的な説示を行わなかった。これに対し、弁護人は、執行猶予を付与しなかった理由を説示していない点は違法であるとして上告した。
あてはめ
執行猶予の合否は、事実審が諸般の事情を総合的に評価して決定する裁量的判断事項である。法律上、執行猶予を付さないことは刑の減免という法的構成要件の不適用を意味するものではないため、その判断過程を逐一理由として記載することは要求されない。したがって、理由の説示がないことをもって直ちに違法と解することはできない。
結論
執行猶予を与えない場合にその理由を説示しなくても違法ではなく、上告理由には当たらない。
実務上の射程
量刑判断全般、特に執行猶予の付与に関する事実審の広範な裁量を裏付ける判例である。答案上は、理由不備(刑訴法378条4号等)を主張する場面において、執行猶予の不付与については理由説示が不要であることの根拠として利用できる。
事件番号: 昭和22(れ)189 / 裁判年月日: 昭和23年2月20日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫を言渡すかどうかは、事實審たる裁判所の刑の量定に關する專權事項であるから、裁判所が刑の執行を猶豫する情状がないと認めて、その執行を猶豫しなかつたとしても、それが經驗法則に反しない限り、刑法第二五條に違反するものではない。 二 判決には刑の執行を猶豫しない理由を示すべき規定はないのであるから、原判決がその…
事件番号: 昭和24新(れ)538 / 裁判年月日: 昭和25年9月7日 / 結論: 棄却
第一審判決の量刑の不當を理由として右判決を破毀し、刑の量定をやりなおした原審においては、第一審の認定した犯罪事實並びにその認定手續については亳も爭がなく、かつ原判決は第一審判決の確定した事實を基礎としたものであるから、原判決は、第一審判決の認定したと同一の事實、並びに證據を引用したものと解することができる。