判旨
有罪判決においては、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示せば足り、量刑上の斟酌事情を逐一説示する必要はない。量刑及び執行猶予の可否は、裁判所の広範な自由裁量に委ねられている。
問題の所在(論点)
有罪判決において、量刑上斟酌した事情やその理由を逐一説示する必要があるか(刑事訴訟法335条1項の記載義務の範囲)。また、量刑および執行猶予の判断に関する裁判所の裁量の性質。
規範
有罪判決に記載すべき事項は、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用である(刑訴法335条1項参照)。量刑(刑の量定および執行猶予の成否)は、裁判所が諸般の事情を考慮して決定する自由裁量に属する。したがって、量刑の根拠となった具体的な事情やその理由について、判決書において個別に説示することは必ずしも必要ではない。
重要事実
被告人らは、第一審の量刑が軽すぎると主張する検察官の控訴趣意に対し、原審(控訴審)が特定の犯情(錐に関する事実等)や共犯者間の主従関係について詳細に判示しなかったこと、および執行猶予を付さなかったことを不服として上告した。
あてはめ
有罪を言い渡す判決においては、法が定める「罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用」を示せば足る。本件において、検察官が主張した特定の事実(錐に関する事実)は、単に犯情の一つとして主張されたに過ぎず、判決においてこれに個別に触れなかったとしても違法とはいえない。また、共犯者のうち誰が主謀者であるかといった事実は「罪となるべき事実」そのものではない。執行猶予の存否も含め、量刑は事実審裁判所の諸般の事情に照らした裁量判断であり、著しく正義に反すると認められない限り上告理由には当たらない。
結論
有罪判決に量刑事情の説示は必須ではなく、量刑・執行猶予の判断が裁判所の自由裁量に属することから、原判決に違法はない。上告棄却。
事件番号: 昭和24新(れ)538 / 裁判年月日: 昭和25年9月7日 / 結論: 棄却
第一審判決の量刑の不當を理由として右判決を破毀し、刑の量定をやりなおした原審においては、第一審の認定した犯罪事實並びにその認定手續については亳も爭がなく、かつ原判決は第一審判決の確定した事實を基礎としたものであるから、原判決は、第一審判決の認定したと同一の事實、並びに證據を引用したものと解することができる。
実務上の射程
答案上、判決書の記載事項(刑訴法335条1項)に関する問題で、量刑理由の不記載が理由不備にあたらないことを論証する際に用いる。裁判所の「量刑上の裁量権」の広範さを基礎付ける判例として重要である。
事件番号: 昭和24(れ)247 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
刑の執行猶豫の言渡をしないことが憲法第三六條のいわゆる「殘虐な刑罰」に該らないこと及び刑の執行猶豫の言渡をしないために被告人の家族が生活に困るような場合でもその刑の言渡をした判決が憲法に違反するものでないことは、既に當裁判所の判決とするところである。(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日大法廷判決、昭和二二…