判旨
控訴裁判所は、控訴趣意書に含まれず答弁書において新たになされた主張に対して判断を示す必要はなく、また、刑の執行猶予を言い渡すか否かは事実審裁判所の自由裁量に属する。
問題の所在(論点)
1. 控訴趣意書にない主張が答弁書でなされた場合、控訴裁判所に判断義務が生じるか。 2. 刑の執行猶予を付すか否かの判断は、裁判所の裁量事項か。
規範
1. 控訴審の審判範囲は控訴趣意書に記載された事項を基本とし、答弁書において新たになされた主張に対し、裁判所は判断を示す義務を負わない。 2. 刑の執行猶予の言渡し(刑法25条)の可否については、事実審裁判所の広範な自由裁量に委ねられる。
重要事実
被告人が控訴した事案において、控訴趣意書には含まれていなかった主張が、後の答弁書において新たになされた。また、被告人側は原判決が刑の執行猶予を付さなかったことの不当性を主張し、判例違反を理由に上告した。さらに、被告人本人の上告趣意書は提出期限を過ぎて提出されていた。
あてはめ
1. 刑事訴訟法の構造上、審判の対象は控訴趣意書によって画定されるべきものである。本件では、問題となる主張が答弁書で初めて示されたに過ぎないため、原審がこれに判断を示さなかったことに違法はない。 2. 執行猶予は諸般の情状を考慮して決せられるべき性質のものであり、最高裁大法廷判決(昭和23年10月6日)の趣旨に照らし、事実審の裁量権の範囲内にあるといえる。
結論
原判決に判断遺脱や判例違反の違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
控訴審における審判対象の限定(刑訴法392条・405条関連)および量刑裁量の幅を確認する際に用いる。特に、控訴趣意書以外での主張に対する裁判所の応答義務を否定する文脈で有用である。
事件番号: 昭和29(あ)2120 / 裁判年月日: 昭和29年9月11日 / 結論: 棄却
上告趣意第一点は所論控訴趣意書(上申書と題するもの)は法廷期間経過後の提出にかかるものであるから、この場合刑訴規則二三八条を適用すべき場合でない限り、原審が同趣意書に対し判断を与えなかつたことは当然である。所論引用の判例は適法期間内に提出された控訴趣意書に関するものであつて、本件の場合に当てはまるものではなく、また所論…