新刑訴第四一一條の規定は、上告裁判所が同條第一號乃至第五號所定の事由があつて、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めた場合において職權により判決で原判決を破棄することができることを定めたに過ぎないのであつて、當事者がかかる事由にもとずき上告を申立て得ることを許容したものではない。
新刑訴第四一一條の法意と上告理由
刑訴法411條
判旨
刑事裁判における死刑の選択を含む量刑の判断および酌量減軽の成否は、事実審裁判所の自由な裁量に委ねられており、上告審が介入できる事項ではない。また、職権による破棄事由を定めた規定(現行刑訴法411条等)は、当事者が上告理由として主張できる権利を認めたものではない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が行った死刑の選択を含む量刑の判断や、共犯者間の主謀者の認定等の事実認定について、被告人側が量刑不当や事実誤認を理由として上告することができるか。
規範
酌量減軽および具体的な刑の量定、ならびに共犯者間における主謀者の認定等の事実認定は、いずれも事実審裁判所の自由な裁量権の範囲に属する。上告審は法令違反の有無を審判する場であり、事実審の裁量に属する量刑不当や事実誤認を、当事者が当然に上告理由として主張することは法律上許されない。
重要事実
被告人は強盗殺人罪で起訴され、死刑の判決を受けた。弁護人および被告人は、被告人が犯行後に悔悟していることや殺意がなかったこと、実際には主謀者ではなかったこと等を主張し、原審の量刑は著しく苛酷であり、事実誤認があるとして上告を申し立てた。なお、本件は新刑事訴訟法施行前に公訴提起された事案であった。
あてはめ
酌量減軽や死刑の選択を含む量刑、および共犯者のうち誰が主謀者であるかという判断は、証拠に基づき事実審が決定すべき専権事項である。本件において原審は、被告人の自白のみならず証人の供述等の証拠を総合して事実を認定しており、その判断は合理的な裁量権の範囲内にある。また、刑訴法上の職権破棄条項は裁判所の権能を定めたものであり、被告人に新たな上告理由を付与するものではないため、量刑不当等の主張は適法な上告理由とはならない。
結論
量刑の不当や事実誤認は適法な上告理由にならず、原審の裁量判断は維持されるべきであるため、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑判決を含む極刑の事案であっても、量刑は原則として事実審の裁量に属することを確認した判例である。答案上は、量刑判断のプロセスに裁量権の逸脱・濫用(重要な事実の不告知や考慮不尽等)がない限り、上告審が量刑を理由に介入できないとする理屈の根拠となる。
事件番号: 昭和25(れ)1578 / 裁判年月日: 昭和26年1月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実審がその裁量権の範囲内で適法に行った刑の量定を非難することは、上告理由とならない。また、新刑事訴訟法施行前に公訴提起された事件については、新刑訴法411条による職権での判決変更は認められない。 第1 事案の概要:本件は、新刑事訴訟法の施行前に公訴が提起された事件である。被告人側は、原判決が行っ…