第一審判決の量刑の不當を理由として右判決を破毀し、刑の量定をやりなおした原審においては、第一審の認定した犯罪事實並びにその認定手續については亳も爭がなく、かつ原判決は第一審判決の確定した事實を基礎としたものであるから、原判決は、第一審判決の認定したと同一の事實、並びに證據を引用したものと解することができる。
原審が第一審判決を量刑不當の理由を以つて破毀し、量刑をやりなおす場合と爭のない第一審認定の犯罪事實並びに證據の引用
刑訴法381條,刑訴法397條
判旨
刑の執行猶予を付すか否かは、裁判所が諸般の事情を参酌して決定すべき裁量事項であり、情状に関する事実は証拠による証明を要しない。
問題の所在(論点)
執行猶予の付与が裁判所の裁量に属するか、および量刑に関する情状について証拠調べを要するか。
規範
刑法25条の「執行を猶予することができる」との規定に基づき、執行猶予の可否は、刑の言渡しをする裁判所が諸般の事情を参酌して決定すべき「裁量事項」である。また、刑の量定に関する情状については、訴訟法上、証拠の挙示を要しない。
重要事実
被告人両名に対し、第一審が認定した犯罪事実に基づき刑が言い渡されたが、執行猶予は付されなかった。弁護人は、執行猶予を付さなかったことや、量刑の基礎となる情状について証拠に基づかない判断がなされたこと等が違法であるとして上告した。
あてはめ
刑法25条の文言上、執行猶予は裁判所の裁量に委ねられていることが明白である。本件原判決は、その裁量に基づき執行猶予を与えなかったに過ぎず、裁量の逸脱・濫用等の違法も認められない。また、第一審が認定した事実を引用する形式をとっており、情状事実は犯罪事実とは異なり厳格な証明を要しないため、証拠挙示がなくても訴訟法違反とはいえない。
結論
執行猶予の不付与および情状事実の認定手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
量刑および執行猶予の判断が裁判所の広範な裁量に属することを示す基本判例。実務上、情状事実の認定において自由な証明(または証拠調べ不要)を許容する根拠として引用される。答案では「量刑の不当」が上告理由にならないことや、情状事実の認定手法の適法性を論じる際に活用する。
事件番号: 昭和24(れ)247 / 裁判年月日: 昭和24年7月16日 / 結論: 棄却
刑の執行猶豫の言渡をしないことが憲法第三六條のいわゆる「殘虐な刑罰」に該らないこと及び刑の執行猶豫の言渡をしないために被告人の家族が生活に困るような場合でもその刑の言渡をした判決が憲法に違反するものでないことは、既に當裁判所の判決とするところである。(昭和二二年(れ)第三二三號、昭和二三年六月二三日大法廷判決、昭和二二…