被告人が實刑を科せられた爲めに被告人の家族が生活困難に陷ることがあつても、その判決をもつて違憲であると言うことはできないことは、既に當裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)第二〇一號昭和二三年三月二日言渡、昭和二二年(れ)第一〇五號昭和二三年四月七日言渡)
被告人に實刑を科したためその家族が生活困難に陷る場合と憲法違反
憲法25條
判旨
被告人に実刑を科した結果、その家族が生活困難に陥るとしても、その判決が直ちに基本的人権の尊重(憲法11条)等に反し違憲となることはない。
問題の所在(論点)
刑事裁判において実刑を科すことが、その刑の執行により被告人の家族が生活困難に陥る場合に、憲法11条(基本的人権の尊重)等の趣旨に反し、違憲な判決となるか。
規範
適正な刑事手続に基づき、犯罪事実に対して相当な刑罰(実刑)を科すことは、刑罰制度の本来の目的による。刑の執行に伴い被告人の家族が生活上の困窮に直面したとしても、それは刑罰の執行に伴う事実上の結果にすぎず、判決そのものが憲法11条等の基本的人権を侵害し違憲となるものではない。
重要事実
被告人は懲役1年6か月及び罰金1000円の判決を受けた。弁護人は、被告人が4人の家族を扶養しており、月収3000円という困窮した状況にあることを指摘。実刑判決により被告人が服役すれば、家族が直ちに生活苦に陥ることは明らかであり、家族の生活権保護の救済策がない現状で実刑を科すことは、憲法11条の基本的人権の尊重を侵害し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
被告人が主張する家族の生活困難という事情は、判決そのものの法的妥当性や憲法適合性を左右するものではない。判例の趣旨に照らせば、刑罰権の行使により付随的に生じる家族の窮状は、量刑判断の事情にはなり得ても、判決を違憲とする理由にはならない。したがって、原審が諸事情を考慮した上で実刑を科した判断に憲法違反の瑕疵は認められない。
結論
被告人に実刑を科した結果、家族が生活困難に陥るとしても、当該判決を違憲ということはできず、上告は理由がない。
実務上の射程
刑事実務において、被告人の家庭環境や家族への影響は情状(量刑事情)として考慮されるが、実刑判決そのものを憲法違反とする主張は認められないことを確認した射程の短い判決である。人権侵害を理由とする量刑争いに対する否定的な枠組みとして示されている。
事件番号: 昭和22(れ)201 / 裁判年月日: 昭和23年3月24日 / 結論: 棄却
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【結論(判旨の要点)】法定刑の範囲内で被告人に実刑を科し、執行猶予を付さなかったとしても、直ちに憲法13条に違反するものではない。 第1 事案の概要:被告人に対し、下級審が法定刑の範囲内で実刑判決を言い渡し、執行猶予を付さなかった。これに対し弁護人は、実刑を科し執行猶予を付さないことは憲法13条(個人の尊厳・幸福追求権…