判旨
事実審裁判所が被告人に対し執行猶予を付さず実刑を科すことは、法律が認めた裁判所の自由裁量の範囲内であり、憲法13条の個人の尊厳や憲法25条の生存権に違反しない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が被告人に対し実刑を科し、執行猶予を付さないことが、憲法13条(個人の尊厳)および憲法25条(生存権)に違反するか、あるいは裁判所の裁量を逸脱するものか。
規範
刑の執行猶予を付すか否かは、裁判所に認められた法律上の自由裁量に属する事項である。したがって、被告人が生活苦等の困窮状態にあったとしても、その裁量の行使が直ちに憲法13条(個人の尊厳)や憲法25条(生存権)等の基本的人権を侵害し、憲法違反となることはない。
重要事実
被告人は刑事事件において、第一審判決により実刑の言渡しを受け、刑の執行猶予を付されなかった。被告人側は、生活苦のために罪を犯した事情があるにもかかわらず実刑を科すことは、憲法13条(個人の尊厳)および憲法25条(生存権)に違反するとして、原判決の維持を不服として上告した。
あてはめ
判決文によれば、被告人が仮に生活苦という過酷な状況下で犯罪に至ったとしても、刑事裁判においてどのような刑を科すか、あるいは執行を猶予するかは、法が裁判所に委ねた合理的な裁量の範囲内である。本件において、第一審および原審が諸般の事情を考慮した上で執行猶予を付さなかったことは、適法な裁量の行使であり、個人の尊厳を侵すものや生存権の保障を否定するものとは認められない。
結論
本件において執行猶予を付さず実刑を科したことは憲法13条および25条に違反せず、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
量刑および執行猶予の付与が裁判所の広範な裁量に属することを再確認した判例である。答案上では、被告人の困窮事情等が生存権侵害の文脈で主張されたとしても、刑事責任の存否や刑罰の選択は別次元の法的判断であることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和25(あ)538 / 裁判年月日: 昭和25年11月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】執行猶予を付するか否かは事実審裁判所の自由な裁量に属する事項であり、法定刑の範囲内で実刑を科した判断は憲法13条に違反しない。また、刑の量定が著しく正義に反するという主張は、刑事訴訟法411条が職権破棄事由を定めたものである以上、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:第一審判決が、法定…