本件再上告は昭和二二年二月十三日に本件につき上告審として言渡した判決に對し刑訴應急措置法第十七條の規定にもとずいて申立てられたものであるが右規定にもとずく上告も舊刑訴法にいわゆる上告に外ならないのであるからその提起期間は同法第四一八條に定める所により五日である。
再上告の提起期間
舊刑訴法418條
判旨
弁護人に出頭の機会を適法に与えたにもかかわらず弁護人が出頭しない場合、弁護人不在のまま審理を終結し判決を言い渡すことは、旧刑事訴訟法および憲法に照らして適法である。
問題の所在(論点)
弁護人が公判期日に出頭しなかった場合に、裁判所が弁護人抜きで審理を終結し判決を言い渡す手続が、憲法および刑事訴訟法上の適正手続に反しないか。
規範
刑事手続において被告人の防御権や弁護人依頼権は保障されるべきであるが、裁判所が弁護人に対し適法な期日通知を行い、出頭の機会を十分に付与した場合には、弁護人が自らの意思で出頭しなかったことをもって直ちに審理を停止させる必要はない。手続が適法に進行した以上、その後に提起された上告が法定の提起期間を経過している場合は、不適法な上告として棄却を免れない。
重要事実
原審(名古屋高裁)は、昭和23年2月2日の公判期日について、前年11月11日に3名の弁護人に対し適法に通知を行った。しかし、当該公判期日に弁護人はいずれも出頭しなかった。原審は弁護人不在のまま審理を終結し、判決宣告期日を同月13日と告知して、同日に判決を言い渡した。被告人が本件再上告を申し立てたのは、判決言渡しから5日を経過した後の同月20日であった。
あてはめ
本件では、原審が公判期日の約3か月前に弁護人らへ適法な通知を行っており、出頭の機会は十分に保障されていたといえる。それにもかかわらず弁護人が出頭しなかった以上、裁判所がそのまま審理を終結させることは、防御権の侵害には当たらず適法である。したがって、適法な判決言渡しがあったものと認められ、上告提起期間は言渡しの日から起算される。本件上告は5日の提起期間を徒過して受理されているため、上告権消滅後の申立てであると評価される。
結論
原審の手続に違法はなく、期間徒過後になされた本件再上告は不適法であるため、上告を棄却する。
実務上の射程
旧法下の判断であるが、現代の刑事訴訟手続においても、正当な理由なく弁護人が出頭しない場合に一定の条件下で手続を進行させる実務の憲法適合性を裏付ける。ただし、必要的弁護事件等における現在の刑事訴訟法上の規律とは別途検討を要する点に注意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)1496 / 裁判年月日: 昭和24年2月15日 / 結論: 棄却
上告趣意書を差出すべき法定期間を經過した後に差出された辯護人選任届によつてはその以前に差出された辯護人名儀の上告趣意書を追完してその差出を有効とすることができないことは當裁判所の判例とするところである。
事件番号: 昭和26(れ)2273 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要弁護事件ではない事件において、適法な召喚を受けた弁護人が出頭しない場合に、弁護人なしで開廷し判決を言い渡すことは、憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人又は弁護人が適法な召喚を受けながら、正当な理由なく公判期日に出頭しなかった。原審は、これまでに公判期日を3回にわたって延期し、…
事件番号: 昭和26(れ)1092 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法違反を主張する上告趣意であっても、その実質が単なる量刑不当の主張に帰する場合には、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が憲法違反を理由として上告を申し立てた事案。しかし、その主張内容を精査したところ、実質的には量刑が重すぎるという不服申し立てにすぎないものであった。 第2…
事件番号: 昭和23(つ)4 / 裁判年月日: 昭和23年11月15日 / 結論: 棄却
一 以上各事實の經過から推すと本件上訴權の抛棄には所論のような錯誤があつたものとは到底判斷することはできない、然らば被告人が一旦上訴權を抛棄すれば之に因つて上訴權は消滅し、爾後更に上訴をすることができないことは刑訴法第三八六條の規定する所である。されば本件上訴權の抛棄が錯誤に基ずくものなることを主張して之が抛棄の取消を…