記録を精査するに、原審第三回公判期日として指定された昭和二四年一〇月四日に被告人が病気のため診断書を添えて(受診断書には昭和二四年九月二七日より向う一〇日間の静養を要する旨が記載されている)期日変更を申請し、このため次回公判期日が同年一一月一日と指定されたことが認められるけれども右の事実は第四回公判期日における被告人の不出頭についての正当の理由とはならない。又たとい弁護人中一人の死亡の事実を仮りに認めても弁護人全部の不出頭を正当化するものでもないと言わなければならない。されば強制弁護の事件でない本件において旧刑訴法第四〇四条により原審第四回公判期日において被告人、弁護人共に不出頭のままA、B両証人を喚問して審理を終結しても何等違法ということはできない。
旧刑訴法第四〇四条にいわゆる正当な自由のない事例
旧刑訴法404条,旧刑訴法410条8号,旧刑訴法410条11号
判旨
強制弁護事件でない場合において、被告人が病気による期日変更申請後の指定期日に不出頭であり、かつ弁護人の一部が死亡していたとしても、それらが不出頭の正当な理由にならない限り、被告人及び弁護人の欠席のまま証人尋問等の審理を進めることは違法ではない。
問題の所在(論点)
強制弁護事件ではない事件において、被告人が過去に病気による期日変更を受けており、かつ弁護人の一人が死亡していたような状況下で、被告人及び弁護人の不出頭のまま証人尋問等の審理を進めることは、被告人の防御権を侵害する手続違法となるか。
規範
強制弁護事件(刑事訴訟法289条1項)に該当しない事件においては、公判期日に被告人又は弁護人が出頭しない場合であっても、その不出頭について「正当な理由」が認められない限り、裁判所は被告人や弁護人の欠席のまま審理(証人尋問、結審等)を進めることが可能である。この際、事前の病気による期日変更の経緯や弁護人の死亡という事実があったとしても、当該期日における不出頭を直接的に正当化する事情といえなければ、手続上の違法は構成しない。
重要事実
被告人は物価統制令違反等に問われた事件において、原審(控訴審)の第3回公判期日(昭和24年10月4日)に際し、10日間の静養を要する旨の診断書を提出して期日変更を申請した。これを受け、次回期日は同年11月1日に指定されたが、被告人はこの第4回公判期日に出頭しなかった。また、弁護人の一人が死亡していた事実はあったものの、他の弁護人も含め全員が出頭しなかった。原審は、この第4回公判期日において、被告人及び弁護人が共に欠席したまま証人2名の尋問を行い、審理を終結した。
あてはめ
まず、被告人の不出頭について検討するに、過去に10日間の静養を要する診断書を出して期日変更がなされた事実はあるが、その約1ヶ月後の第4回公判期日にまでその影響が及んでいるとはいえず、不出頭の「正当な理由」にはならない。次に、弁護人の不出頭について検討するに、仮に弁護人のうち一人が死亡していたとしても、他の弁護人が存在し、弁護人全員が不出頭であることを正当化する理由にはならない。したがって、本件は強制弁護事件ではないため、旧刑事訴訟法404条(現行法上の出頭を要しない場合等の規定に相当)等に基づき、両者不出頭のまま証人喚問・審理終結を行っても何ら違法ではないと解される。
結論
本件手続は適法である。被告人及び弁護人の不出頭に正当な理由がない以上、その欠席のまま審理を進めた原判決に理由不備や手続違法の瑕疵は認められない。
実務上の射程
本判決は、刑事訴訟における被告人の出頭権と裁判の迅速・円滑な進行の調整を示すものである。実務上、被告人や弁護人が不当に審理を遅延させる目的で不出頭を繰り返す場合、本判決の法理を援用して、強制弁護事件でない限りは審理を強行できる根拠となり得る。ただし、現代の運用では被告人の防御権保障が重視されるため、「正当な理由」の有無についてはより慎重に判断されるべきである点に留意が必要である。
事件番号: 昭和23(れ)530 / 裁判年月日: 昭和24年3月23日 / 結論: 棄却
本件再上告は昭和二二年二月十三日に本件につき上告審として言渡した判決に對し刑訴應急措置法第十七條の規定にもとずいて申立てられたものであるが右規定にもとずく上告も舊刑訴法にいわゆる上告に外ならないのであるからその提起期間は同法第四一八條に定める所により五日である。