判旨
弁護人が正当な理由なく証人尋問期日に欠席した場合、裁判所が当該証人の再尋問申請を却下したとしても、弁護権の不当な制限には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護人が自己の過失により欠席した期日に行われた証人尋問について、事後の再尋問申請を却下することが、憲法または刑事訴訟法上の弁護権の不当な制限(手続的違法)に該当するか。
規範
裁判所は、一旦尋問した証人について、必ずしも常に再度尋問しなければならない義務を負うものではない。弁護権の行使が保障されるべきとしても、訴訟手続の遅延を回避し、適正な手続を維持する観点から、弁護側の懈怠に起因する再尋問の必要性は制限的に解される。
重要事実
被告人両名の弁護人は、所定の証人尋問期日に「故なく(正当な理由なく)」欠席した。その後、弁護人は当該証人の再尋問を申請したが、原審(控訴審)はこれを却下した。弁護人は、この却下決定が不当に弁護権を制限するものであるとして上告した。
あてはめ
本件において、弁護人が証人尋問期日に欠席したことは「故なく」なされたものであり、弁護権行使の機会が裁判所によって不当に奪われたわけではない。また、一度適法に行われた証人尋問について、裁判所が常に再度の尋問を行うべき義務を負うものではない。したがって、弁護側の不注意により尋問の機会を逸した状況下で、裁判所が再尋問の申請を斥けたとしても、防御権の侵害があったとはいえない。
結論
再尋問申請の却下は適法であり、弁護権の不法な制限には当たらない。
実務上の射程
弁護人の責めに帰すべき事由による証人尋問の欠如について、裁判所の裁量を肯定する射程を持つ。答案上は、被告人の防御権と迅速な裁判の要請が衝突する場面において、弁護人の訴訟活動の懈怠が防御権保障の限界を画する要素となり得ることを示す際に活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)2106 / 裁判年月日: 昭和26年12月18日 / 結論: 棄却
被告人らの原審弁護人角田俊次郎が原審第一回公判において、A造船工業株式会社社員B及びCを証人として申請し原審においてその採否を留保していたところ、結局第二回公判において、いずれもこれを却下したことは所論のとおりである。しかし原審において弁護人が右両名の証人を申請したのは、単に犯情の点について、買主が売つて呉れといつたの…