判旨
第一審で弁護人を選任しない旨を被告人が自ら申し出た場合、国選弁護人を付さずに手続を進めることは、特段の事情がない限り、適法な訴訟手続として認められる。
問題の所在(論点)
被告人が弁護人を不要とする旨を申し出た場合に、裁判所が国選弁護人を付さずに審理を行うことが、被告人の防御権を侵害する訴訟手続上の違法(刑訴法405条、411条等)となるか。
規範
被告人が自ら書面で弁護人を必要としない旨の申出を行っている場合、その意思表示が有効である限り、第一審において国選弁護人を付さずに審理を行うことは訴訟手続上の違法には当たらない。
重要事実
被告人は、第一審である和歌山簡易裁判所に対し、書面をもって「弁護人を必要としない」旨の申出を行った。これを受け、第一審裁判所は国選弁護人を付さずに審理を進行し判決を言い渡した。上告審において、弁護人は「営利の目的」が犯罪構成要件である等の独自の主張に基づき、起訴状の不備や国選弁護人を付さなかった手続の違憲・違法を主張した。
あてはめ
被告人は昭和24年4月13日付の書面により、自らの意思で弁護人を必要としない旨を裁判所に伝えている。この申出は有効なものとして記録されており、手続上、国選弁護人を付すべき義務を課す刑罰法規や憲法の規定に直ちに反するものとはいえない。また、弁護人が主張する構成要件に関する解釈や刑訴施行法5条の一部失効といった主張は独自の法解釈に過ぎず、第一審・第二審で争われていない事項である。したがって、国選弁護人を付さなかったことに著しい正義に反するような違法は認められない。
結論
被告人の意思に基づき弁護人を付さなかった第一審の手続に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
任意的弁護事件(刑事訴訟法289条1項の必要的弁護事件以外)において、被告人が自ら弁護人の選任を拒絶した場合に、裁判所が国選弁護人を付す義務を負わないことを確認する事例。答案上は、被告人の防御権放棄の有効性と、裁判所の職権による弁護人選任の裁量の限界を示す際の参考となる。
事件番号: 昭和26(れ)634 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法37条3項は、全ての被告事件に弁護人を付すことや、被告人に弁護人選任権を告知する義務を裁判所に課すものではなく、必要的弁護事件の範囲は立法府の裁量に委ねられている。また、同条1項の「公平な裁判所」とは偏頗の恐れのない組織構成を指し、共同被告人間での量刑の不均衡を理由に憲法違反を主張することはで…