判旨
必要弁護事件ではない事件において、適法な召喚を受けた弁護人が出頭しない場合に、弁護人なしで開廷し判決を言い渡すことは、憲法37条3項に違反しない。
問題の所在(論点)
必要弁護事件以外の事件において、適法な召喚を受けた弁護人が欠席した場合に、弁護人不在のまま開廷・審理し判決を下すことが、憲法37条3項(被告人の弁護人依頼権)に違反するか、あるいは弁護権の不当な制限に当たるかが問題となる。
規範
必要弁護事件(旧刑訴法334条参照)に該当しない事件において、適法に召喚を受けた弁護人が公判期日に出頭しない場合、弁護人の列席を待たずに開廷し、その弁論を聞かずに判決を言い渡したとしても、憲法37条3項が保障する弁護人依頼権を侵害するものとはいえない。
重要事実
被告人又は弁護人が適法な召喚を受けながら、正当な理由なく公判期日に出頭しなかった。原審は、これまでに公判期日を3回にわたって延期し、弁護人が出頭する機会を十分に確保してきた。しかし、第4回公判期日に至っても弁護人が出頭しなかったため、原審は弁護人不在のまま開廷し、判決を言い渡した。
あてはめ
本件は必要弁護事件に該当せず、弁護人は適法な召喚を受けながら自ら出頭しなかったものである。原審は直ちに審理を強行したわけではなく、期日を3回も延期して弁護人が出頭できるよう配慮しており、第4回期日で初めて不在のまま開廷している。このような経緯に照らせば、裁判所が被告人の弁護権を不当に制限した事実は認められず、憲法の規定にも抵触しないと解される。
結論
憲法37条3項には違反せず、弁護人不在のままなされた原判決は適法である。
実務上の射程
事件番号: 昭和24(れ)824 / 裁判年月日: 昭和26年1月31日 / 結論: 棄却
一 論旨は、原審裁判所は旧刑訴法第三三四条を墨守して弁護人の期日懈怠の責任を被告人等に負わしめ、弁護人の立会なくして公判の審理を受けることを被告人等に強制したものであるが、旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条第三項、刑訴応急措置第四条によつて改正変更されたものと解すべきであるから、原審の審理手続は、右憲法及び刑訴応急措置法…
任意的弁護事件における弁護人の出頭義務と、審理の遅延に対する裁判所の訴訟指揮権の限界を示す。被告人・弁護人の不出頭を理由とした延期が繰り返された場合には、弁護人不在での開廷が許容される一基準となる。
事件番号: 昭和25(あ)2226 / 裁判年月日: 昭和27年3月18日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の権利は被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人がこの権利を行使する機会を与へその行使を妨げなければよいのである。(昭和二四年(れ)二三八号同年一一月三〇日大法廷判決)。ところで本件記録によれば被告人は第一審第一回公判期日の前日である昭和二四年九月七日弁護人を選任し、同弁護人は右第一回公判期日に…
事件番号: 昭和25(あ)1565 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法施行法5条にいう「前条の事件」とは、施行の際にまだ公訴が提起されていないすべての事件を指し、弁護人の選任を辞退した場合には同条に基づき弁護人なしで審理することが許容される。 第1 事案の概要:本件は刑事訴訟法施行後の昭和24年9月30日に公訴が提起された事件である。第一審である愛知中村簡…
事件番号: 昭和23(れ)530 / 裁判年月日: 昭和24年3月23日 / 結論: 棄却
本件再上告は昭和二二年二月十三日に本件につき上告審として言渡した判決に對し刑訴應急措置法第十七條の規定にもとずいて申立てられたものであるが右規定にもとずく上告も舊刑訴法にいわゆる上告に外ならないのであるからその提起期間は同法第四一八條に定める所により五日である。
事件番号: 昭和26(れ)841 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判で供述した内容だけでは自白が強制によるものとは認められず、証拠採用は適法である。また、被告人側の証人申請を却下することは裁判所の裁量に属し、憲法37条に反しない。 第1 事案の概要:被告人Aが原審公判において、自白が強制によるものである旨の供述を行った。また、被告人側は証人申請を行った…