判旨
刑事訴訟法施行法5条にいう「前条の事件」とは、施行の際にまだ公訴が提起されていないすべての事件を指し、弁護人の選任を辞退した場合には同条に基づき弁護人なしで審理することが許容される。
問題の所在(論点)
刑事訴訟法施行後に公訴が提起された事件において、被告人が弁護人の選任を辞退した場合、刑事訴訟法289条1項を適用せず、刑事訴訟法施行法5条を適用して弁護人なしで審理を行うことは許されるか。同法5条にいう「前条の事件」の範囲が問題となる。
規範
刑事訴訟法施行法5条にいう「前条の事件」とは、犯行の行われた時期が刑事訴訟法施行の前後であることを問わず、施行の際にまだ公訴の提起されていない事件のすべてを指すものと解する。また、同法5条(旧刑事訴訟法適用事案)に該当する場合、被告人が弁護人の選任を辞退したときは、裁判所は弁護人を選任せず開廷審理することができる。
重要事実
本件は刑事訴訟法施行後の昭和24年9月30日に公訴が提起された事件である。第一審である愛知中村簡易裁判所での審理において、被告人は弁護人の選任を辞退した。これを受け、裁判所は弁護人を選任することなく開廷・審理を行い、判決を言い渡した。弁護人は、これが刑事訴訟法289条1項(必要的弁護事件)に違反し、憲法37条3項にも反すると主張して上告した。
あてはめ
本件は刑事訴訟法施行時にまだ公訴が提起されていなかった事件であり、施行法5条にいう「前条の事件」に該当する。本件被告人は自ら弁護人の選任を辞退している。この場合、施行法5条の規定に従い、裁判所が弁護人を選任せずに開廷審理したとしても、必要的弁護を定めた刑事訴訟法289条1項に違反するものではない。したがって、同条違反を前提とする憲法37条3項違反の主張もその根拠を欠く。
結論
本件審理手続に刑事訴訟法289条1項違反はなく、憲法37条3項にも違反しない。本件上告を棄却する。
事件番号: 昭和26(れ)2273 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要弁護事件ではない事件において、適法な召喚を受けた弁護人が出頭しない場合に、弁護人なしで開廷し判決を言い渡すことは、憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人又は弁護人が適法な召喚を受けながら、正当な理由なく公判期日に出頭しなかった。原審は、これまでに公判期日を3回にわたって延期し、…
実務上の射程
刑事訴訟法施行時(昭和24年)の経過措置に関する判断であり、現在の実務での直接的な射程は極めて限定的である。ただし、新旧法の適用関係や施行法の解釈手法、および必要的弁護の例外が認められる法的根拠の検討において参照され得る。
事件番号: 昭和24(れ)59 / 裁判年月日: 昭和25年11月8日 / 結論: 棄却
原審第二回公判において立会検事が被告人に対し附帯控訴をしたこと及び原判決が第一審で無罪になつた事実であるAに対し、被告人が人絹織物等二八〇疋を販売譲渡した点を有罪と判定したことはいずれも所論のとおりである。しかし同一事件においては、訴訟のいかなる段階においても唯一の危険があるのみであつて、そこには二重危険というものは存…
事件番号: 昭和25(あ)2329 / 裁判年月日: 昭和26年5月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当せず、かつ同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も認められない場合には、上告を棄却すべきであるとの判断を示したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決に対して上告を申し立てたが、弁護人が主張する上告趣意の内容が、刑事訴訟法405条に規定さ…
事件番号: 昭和26(あ)569 / 裁判年月日: 昭和27年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判期日に出頭せず、弁護人も出頭しない場合であっても、刑事訴訟法上の免訴事由が認められない限り、裁判所は上告棄却の決定をすることができる。 第1 事案の概要:被告人が上告を提起したが、弁護人の提出した上告趣意書の内容が刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しないものであった事案。記録を精査…
事件番号: 昭和25(あ)1698 / 裁判年月日: 昭和26年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由に当たらない主張や職権破棄事由のない事案において、上告を棄却し、訴訟費用を被告人に負担させることが適法である。裁判官全員一致の意見により、刑事訴訟法に基づき適正に処理されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が原審の判決を不服として上告を申し立てた事案。弁護人が提出した上告趣意書の内容に…