一 論旨は、原審裁判所は旧刑訴法第三三四条を墨守して弁護人の期日懈怠の責任を被告人等に負わしめ、弁護人の立会なくして公判の審理を受けることを被告人等に強制したものであるが、旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条第三項、刑訴応急措置第四条によつて改正変更されたものと解すべきであるから、原審の審理手続は、右憲法及び刑訴応急措置法の規定に違反するというのである。しかし、憲法第三七条第三項前段は刑事被告人に対しいかなる場合にも被告人自ら資格を有する弁護人を依頼し得ることを保障したものであり、また同項後段及び刑訴応急措置法第四条は、被告人において自ら弁護人を依頼することができないときに国に対し弁護人を選任することを請求する権利があることを認めたものであつて、刑事事件についてはいかなる事件であつても例外なしに弁護人がなければ公判を開廷することができないことを規定したものではない。従つて、これらの規定により旧刑訴第三三四条は所論のように改正変更されたものではないから論旨は理由がない。 二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人が自らその期日を懈怠して出頭しなかつたにかかわらず、原審に弁護権行使の不法制限があると主張する論旨の理由ないことは、言うまでもないところである。
一 旧刑訴法第三三四条は憲法第三七条、刑訴応急措置法第四条により改正変更されたが−必要的弁護事件以外の事件と弁護人の立会の要否 二 公判期日に適式の召喚を受けた弁護人の不出頭と弁護権の不法制限
憲法37条3項,刑訴応急措置法4条,旧刑訴法334条,旧刑訴法320条1項,旧刑訴法410条11号
判旨
憲法37条3項は、被告人に弁護人依頼権や国選弁護人請求権を保障するものであり、いかなる事件においても弁護人が欠けた状態で公判を開くことができないとまで規定するものではない。
問題の所在(論点)
弁護人が正当な理由なく公判期日に欠席した場合において、弁護人の立会いなく審理を行うことは、被告人の弁護人依頼権(憲法37条3項)に違反するか。
規範
憲法37条3項前段は被告人が弁護人を依頼し得ることを保障し、同項後段は自ら依頼できない時に国へ選任を請求する権利を認めたものである。これは、刑事事件において例外なく弁護人の立会いなしに公判を開廷できないことを規定したものではない。
事件番号: 昭和26(れ)2273 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】必要弁護事件ではない事件において、適法な召喚を受けた弁護人が出頭しない場合に、弁護人なしで開廷し判決を言い渡すことは、憲法37条3項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人又は弁護人が適法な召喚を受けながら、正当な理由なく公判期日に出頭しなかった。原審は、これまでに公判期日を3回にわたって延期し、…
重要事実
被告人両名外1名の弁護人は、裁判長より適式な公判期日の召喚状を受け取っていたが、正当な理由なく当該期日に出頭しなかった。原審裁判所は、弁護人が不在のまま公判を開廷して審理を進めた。これに対し被告人側は、弁護人の不在により審理を行うことは憲法37条3項等に違反すると主張して上告した。
あてはめ
本件では、弁護人は適式な召喚を受けながら自ら期日を懈怠して出頭していない。憲法37条3項の趣旨は、被告人の防御権を保障するために弁護人を利用する機会を確保することにあるが、弁護人が自らの責に帰すべき事由で欠席した場合には、被告人はその不利益を甘受せざるを得ない。原審公判調書において被告人らが「弁護権を抛棄せり」と記載されている点も踏まえれば、弁護人不在のまま審理を続行した手続に憲法違反の不法はないと解される。
結論
憲法37条3項に違反しない。弁護人が適式な召喚を受けながら懈怠した場合には、弁護人抜きで審理を行うことも許容される。
実務上の射程
憲法上の弁護人依頼権の限界を示す判例である。現行刑事訴訟法下では必要的な弁護事件(289条)が存在するが、本判決は、憲法の保障が「いかなる場合も弁護人なしでの開廷を禁じる」絶対的なものではないことを明らかにしている。答案上は、弁護人の欠席による審理の有効性が問題となる場面での憲法的解釈として引用できる。
事件番号: 昭和25(あ)2226 / 裁判年月日: 昭和27年3月18日 / 結論: 棄却
憲法三七条三項前段所定の権利は被告人が自ら行使すべきもので裁判所は被告人がこの権利を行使する機会を与へその行使を妨げなければよいのである。(昭和二四年(れ)二三八号同年一一月三〇日大法廷判決)。ところで本件記録によれば被告人は第一審第一回公判期日の前日である昭和二四年九月七日弁護人を選任し、同弁護人は右第一回公判期日に…
事件番号: 昭和23(れ)530 / 裁判年月日: 昭和24年3月23日 / 結論: 棄却
本件再上告は昭和二二年二月十三日に本件につき上告審として言渡した判決に對し刑訴應急措置法第十七條の規定にもとずいて申立てられたものであるが右規定にもとずく上告も舊刑訴法にいわゆる上告に外ならないのであるからその提起期間は同法第四一八條に定める所により五日である。
事件番号: 昭和26(れ)841 / 裁判年月日: 昭和26年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が公判で供述した内容だけでは自白が強制によるものとは認められず、証拠採用は適法である。また、被告人側の証人申請を却下することは裁判所の裁量に属し、憲法37条に反しない。 第1 事案の概要:被告人Aが原審公判において、自白が強制によるものである旨の供述を行った。また、被告人側は証人申請を行った…