一 所論昭和二二年五月九日第二審公判でなされた自白なるものは、昭和二一年四月六日被告人が勾留執行停止決定により釋放せられ爾來そのまま引續き一ケ年餘を經過した後において身柄全く自由な状態の下に爲されたものであるから、憲法第三八條第二項の「不當に長く抑留又は勾禁された後の自白に」該らない(昭和二二年(れ)第二七一號同二三年六月三〇日大法廷判決參照) 二 假に所論の勾留若しくは喚問等が違憲(憲法第三一條違反)であるとしてもそれは別な救濟法があるのであつて、右の各違法は第二審判決に影響を及ぼさないことは明白である。第二審判決從つて又これを是認して被告人の上告を棄却した原上告判決には憲法に違反する點は存しない。(昭和二三年(れ)第六五號同年七月一四日大法廷判決參照)
一 勾留執行停止により引續き一ケ年餘を經過した後になした自白と憲法第三八條第二項にいわゆる「不當に長く抑留文は勾禁された後の自白」 二 勾留若しくは喚問手續の違憲と上告理由
憲法38條2項,憲法31條,刑訴法411條
判旨
憲法38条2項にいう「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」とは、身体の自由を拘束された状態が継続している中でなされた自白を指す。釈放後、身柄が自由な状態でなされた自白については、前後の拘禁期間にかかわらず同条項の適用はない。
問題の所在(論点)
勾留執行停止により釈放され、1年余り身柄が自由であった後に公判でなされた自白が、憲法38条2項の「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」に該当するか。
規範
憲法38条2項が「不当に長く抑留又は拘禁された後の自白」を証拠とすることを禁じている趣旨は、長期の身体拘束による心理的圧迫の下でなされた自白の任意性を疑う点にある。したがって、釈放され身柄が自由な状態の下でなされた自白は、たとえ過去に長期間の拘留があったとしても、原則として同条項の適用を受けない。
重要事実
被告人は、事件発生後に勾留されていたが、昭和21年4月6日に勾留執行停止決定により釈放された。その後、1年以上の期間、身柄が自由な状態が継続していた。昭和22年5月9日、被告人は第2審公判において自白(本件自白)を行ったが、これが不当に長い拘禁後の自白にあたり違憲ではないかが争われた。
あてはめ
本件における自白は、勾留執行停止によって釈放されてから1年以上の月日が経過した後に、第2審の公判廷でなされたものである。この時点において、被告人は「身柄全く自由な状態」にあり、長期の身体拘束に伴う不当な心理的圧迫の下にあったとは認められない。したがって、身体拘束の継続性を前提とする憲法38条2項の要件を欠くといえる。
結論
本件自白は憲法38条2項に違反せず、証拠能力を有する。再上告は棄却される。
実務上の射程
自白の任意性が争われる場面において、憲法38条2項(及び刑訴法319条1項)の「不当な拘禁」の存否を検討する際の射程を示す。身柄開放後の自白には同条項が適用されないことを明示した点に意義があり、答案上は拘束の継続性の有無をチェックする指標として用いる。
事件番号: 昭和27(あ)5248 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘留された後の自白であっても、身柄拘束に違法性が認められず、かつ拘束と自白との間に因果関係が認められない場合には、憲法38条2項により証拠能力が否定されることはない。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察員に対する供述調書の段階から犯行全部を認めていた。その後、被告人は保釈を請求したが、…