判旨
不当に長く拘禁された後の自白であっても、強制、拷問、脅迫等によるものでない限り、憲法38条2項にいう不当な拘禁による自白には当たらない。また、公判廷で反対尋問の機会が十分に与えられた証言は、伝聞証拠の問題を生じることなく証拠能力が認められる。
問題の所在(論点)
1.「不当に長い拘禁」後の自白が憲法38条2項により証拠能力を否定されるか。2.公判廷で反対尋問の機会が与えられた証言に伝聞法則(刑訴法321条等)の適用があるか。
規範
自白の証拠能力について、憲法38条2項が禁止する「不当な拘禁」による自白とは、単に拘禁期間が長いことのみを指すのではなく、その拘禁によって供述の任意性が喪失されたと認められる状況を指す。また、公判廷において被告人及び弁護人に反対尋問の機会が十分に与えられた証人尋問の結果は、供述録取書(伝聞書面)としての制約を受けない。
重要事実
被告人が自白を行った際、その自白が「不当に長く拘禁された後」のものであるとして、弁護側が憲法38条1項・2項違反を主張した。また、第一審が証人Aの証言を証拠としたことにつき、伝聞法則を定めた刑事訴訟法321条の解釈を誤った法令違反があるとして上告がなされた。
あてはめ
自白については、原判決の説示によれば不当に長く拘禁された後の自白とはいえず、他に強制、拷問、脅迫等によってなされたと認めるべき資料も存在しない。したがって、任意性に疑いのある自白とは評価できない。証言については、書面を証拠としたのではなく、公判廷において反対尋問の機会を十分に与えた上での生身の証言を証拠としているため、伝聞法則の問題は生じない。
結論
被告人の供述は憲法38条に違反せず、また公判廷での証言を証拠とした判断に法令違反はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
自白の任意性については、拘禁の長さという形式的側面だけでなく、実質的に供述を強制するような状況があったかを重視する。また、伝聞法則の趣旨が反対尋問権の保障にあることを踏まえ、公判廷での供述については証拠能力が原則として認められることを確認する事案である。
事件番号: 昭和27(あ)5248 / 裁判年月日: 昭和29年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘留された後の自白であっても、身柄拘束に違法性が認められず、かつ拘束と自白との間に因果関係が認められない場合には、憲法38条2項により証拠能力が否定されることはない。 第1 事案の概要:被告人は、司法警察員に対する供述調書の段階から犯行全部を認めていた。その後、被告人は保釈を請求したが、…