判旨
逮捕・勾留の翌日になされた自白については、不当に長い拘留後の自白(憲法38条2項、刑訴法319条1項)には当たらず、その証拠能力は否定されない。
問題の所在(論点)
逮捕・勾留の翌日になされた自白が、憲法38条2項および刑訴法319条1項にいう「不当に長く拘禁された後の自白」に該当し、証拠能力が否定されるか。
規範
自白の証拠能力が否定される「不当に長く拘禁された後の自白」とは、身柄拘束の期間が社会通念上不当に長期にわたり、被疑者の精神的・肉体的自由を制約して自白を強いる蓋然性がある場合をいう。
重要事実
被告人は昭和26年7月31日に逮捕され、即日勾留された。その翌日である同年8月1日に、司法警察員に対して犯罪事実を認める供述(自白)を行った。弁護人は、当該自白が不当な長期拘禁後のものであるとして憲法違反および証拠能力の欠如を主張した。
あてはめ
本件において被告人が自白を行ったのは、逮捕および勾留がなされた日の翌日である。このような短期間の身柄拘束下における自白は、時期的・状況的に見て「不当に長い拘禁」の結果として得られたものとは評価できない。したがって、身柄拘束の期間そのものを理由として自白の任意性を否定すべき事情は存在しない。
結論
逮捕・勾留の翌日の自白は不当長期拘禁後の自白には当たらず、証拠能力を有する。
実務上の射程
本判決は、不当長期拘禁の該当性を判断する際の時間的指標の一つを示している。数日程度の身柄拘束は通常「不当に長い」とは評価されない。ただし、現代の刑事訴訟実務では、期間の長さだけでなく、取調べの頻度や態様、外部との遮断状況等も含めた「任意性に疑いのある自白」全般の問題として検討すべきである。
事件番号: 昭和27(あ)1832 / 裁判年月日: 昭和27年10月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘禁された後の自白であっても、強制、拷問、脅迫等によるものでない限り、憲法38条2項にいう不当な拘禁による自白には当たらない。また、公判廷で反対尋問の機会が十分に与えられた証言は、伝聞証拠の問題を生じることなく証拠能力が認められる。 第1 事案の概要:被告人が自白を行った際、その自白が「…