被告人の官職名その他身分關係を確定しないで、單に郵便局に勤務し、電信事務を擔當していたと云うだけでは、果して被告人が法令に依り公務に從事する資格ある者であつたかどうか明確でないのであつて、被告人が公務員であつたことの判示としては不十分である。
郵便局に勤務し、電信事務を擔當していた者と公務員――公務員であつたことの判示の程度
刑法7條,刑法156條,刑訴法360條1項
判旨
刑法156条の虚偽公文書作成罪の主体である「公務員」とは、法令により公務に従事する資格を有する者を指し、単に郵便局で電信事務を担当していたという事実のみでは、当該資格及び職務権限の有無を確定するに足りない。
問題の所在(論点)
刑法156条(虚偽公文書作成等)の主体たる「公務員」の意義、および職務権限の要否が問題となる。具体的には、郵便局員として事務に従事している事実のみで、法令上の資格および職務権限が認められるかが争点となった。
規範
刑法156条にいう公務員は、同法7条の規定に従い、法令により公務に従事する職員を指す。したがって、その公務に従事する資格が法令に根拠を有する者でなければならず、単に事実上公務に従事しているだけでは足りない。また、公文書偽造等の罪が成立するためには、当該文書の作成が、被告人の職務権限(職務の執行)に関するものであることを要する。
重要事実
被告人は郵便局に勤務し、電信事務を担当していた。被告人は単独または他と共謀し、3回にわたり電信為替受信原本を偽造したとして、原審において刑法156条(虚偽公文書作成等)が適用され処断された。しかし、原判決は被告人の官職名や具体的な身分、法令上の根拠を確定させておらず、被告人の供述からも職務権限の範囲が不明確な状態であった。
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…
あてはめ
原判決は「郵便局に勤務し電信事務を担当していた」と判示するのみで、被告人の官職名や身分を確定していない。法令上の資格が不明なままでは、刑法7条にいう公務員に該当するか否かが明確ではない。また、電信係から郵便係への変更等の経歴はあるが、これだけでは当該電信為替受信原本の作成が被告人の正当な職務権限に属するかを認定するに足りず、証拠に基づかない認定といえる。
結論
被告人が公務員であるか否かを確定せず、かつ職務権限の有無を証拠に基づかずに認定した原判決には、理由不備の違法がある。したがって、原判決を破棄し、広島高等裁判所に差し戻す。
実務上の射程
虚偽公文書作成罪の成否を検討する際、単なる「職場」や「担当事務」の認定だけでなく、法令に基づく身分関係(資格)と具体的職務権限(事務分配)の両面を厳格に認定すべきことを示している。答案上では、刑法7条の公務員定義を引用しつつ、当該公文書を作成する権限の有無を事実から丁寧に拾う際の指針となる。
事件番号: 昭和23(れ)677 / 裁判年月日: 昭和23年10月28日 / 結論: 棄却
一 地方食糧營團の職員名儀の配給停止證明書は刑法上公務員の作るべき文書とみなされる。 二 昭和一九年法律第四號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律第一條にいわゆる「團體又ハ營團、金庫若シクハ此等ニ準ズルモノノ役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス」との規定は、かかる團體等は國家總動員法に…
事件番号: 昭和33(あ)1735 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
A鉄道管理局B電力区助役として区長を補佐する傍ら同管理局から出納員もしくは事務助役出納員として指命され、部内職員の給料、族費等の交付、保管等対内的な出納事務には従事するが、同電力区助役もしくは右出納員名義をもつて対外部関係に関する公文書を作成すべき一般的職務権限を有しない被告人が、行使の目的をもつて内容虚偽の電柱代金代…
事件番号: 昭和24(れ)856 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 破棄自判
一 按ずるに刑法第七條にいわゆる公務員は官制職制によつて其職務權限が定まつているものに限らずすべて法令によつて公務に從事する職員を指稱するものであつて其法令中には單に行政内部の組織作用を定めた訓令と雖も抽象的の通則を規定しているものであれば之を包含するものであることは大審院判例の示すところであつて、今之れを改むべき理由…
事件番号: 昭和38(あ)907 / 裁判年月日: 昭和39年8月28日 / 結論: 破棄差戻
刑法第一五五条第一項にいわゆる公務所または公務員の作るべき文書とは、公務所又は公務員が印章若しくは署名を使用しその権限内において職務執行上作成すべき文書を汎称し、その職務執行の方法範囲が法令に基づくと内規又は慣例によるとを問わないものと解すべきである(昭和一二年七月五日大審院判決、刑集一六巻一一七六頁・明治四五年四月一…