一 地方食糧營團の職員名儀の配給停止證明書は刑法上公務員の作るべき文書とみなされる。 二 昭和一九年法律第四號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律第一條にいわゆる「團體又ハ營團、金庫若シクハ此等ニ準ズルモノノ役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ從事スル職員ト看做ス」との規定は、かかる團體等は國家總動員法に基き国家總動員上の必要により同種若しくは異種の事業の統制又は統制の爲にする經營を目的とするものであり、從つて、その役員その他の職員の權利義務は國家若しくは公共團體における官吏、公吏その他法令に依り公務に從事する職員の職權職務と實質上異るところはないから刑法上の公務員と同一の責任を負擔せしむると共に同一の保護を與える必要上すべての罰則の適用について刑法第七條の公務員と看做したものと解するを相當とする。されば右の罰則とは、所論のように役職員等が涜職、秘密漏泄等のごときその地位を濫用した不法行爲に對する罰則のみを指すものではなく、第三の爲す公務執行妨害、公文書僞造、贈賂等のごとき被害者たる役職員保護のための罰則をも包含するものと解すべきである。
一 配給停止證明書の公文書性 二 昭和一九年法律第四號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律第一條の罰則の適用範圍
昭和22年法律242號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律1條,刑法155條,昭和19年法律4號經濟關係罰則ノ整備ニ關スル法律1條
判旨
「罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」との規定は、役職員の不法行為に対する処罰だけでなく、公文書偽造罪等、当該役職員を保護しその職務の適正を担保するための罰則適用も包含する。
問題の所在(論点)
経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律1条等により「罰則の適用につき公務員とみなされる者」が作成する文書が、刑法上の公文書(刑法155条、158条)に含まれるか。特に「罰則の適用」の範囲が問題となる。
規範
法令により公務に従事する職員とみなされる者の作成する文書は、刑法上の公文書にあたる。この「罰則の適用」に関するみなし規定は、当該団体の役職員が実質的に公務員と同様の職務を担うことから、公務員と同一の責任を負担させるとともに同一の保護を与える趣旨である。したがって、役職員自らの涜職行為等への処罰のみならず、第三者による公文書偽造や公務執行妨害等、役職員の職務執行を保護するための罰則適用も含まれる。
事件番号: 昭和59(あ)555 / 裁判年月日: 昭和61年6月27日 / 結論: 棄却
行使の目的をもつて、ほしいままに、営林署長の記名押印がある売買契約書の売買代金欄等の記載に改ざんを施すなどしたうえ、これを複写機械で複写する方法により、あたかも真正な右売買契約書を原形どおり正確に複写したかのような形式、外観を備えるコピーを作成した所為は、その改ざんが原本自体にされたのであれば未だ文書の変造の範ちゆうに…
重要事実
被告人は、地方食糧営団の職員名義である配給停止証明書を偽造、変造し、これを行使した。当時の経済関係罰則ノ整備ニ関スル法律1条等は、営団の職員を罰則の適用については法令により公務に従事する職員とみなすと規定していた。被告人は、当該規定は役職員自身の地位濫用行為(汚職等)を罰する趣旨に限定されるべきであり、第三者による文書偽造については刑法155条の公文書偽造罪は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
地方食糧営団のような団体は、国家総動員上の必要に基づき統制等を行うものであり、その役職員の職務は実質的に官吏等の公務と異ならない。そのため、刑法上の公務員と同一の責任(処罰)を負わせるだけでなく、同一の保護(公文書としての保護等)を与える必要がある。本件配給停止証明書は、みなし規定により公務員が作成すべき文書に該当するため、これを偽造・変造する行為は、刑法上の公文書偽造・変造罪及び同公使罪の構成要件を充足する。
結論
被告人の行為には刑法155条1項、2項及び158条1項が適用され、公文書偽造、変造及びその行使の罪が成立する。
実務上の射程
「みなし公務員」規定がある場合の文書の性質を画定した重要判決である。答案上は、特別法等で公務員とみなされる者が作成する文書につき、作成者自身の汚職等の処罰(加法的側面)だけでなく、文書自体の公証的価値を保護する公文書偽造罪の適用(保護的側面)も当然に肯定される根拠として用いる。
事件番号: 昭和25(れ)1375 / 裁判年月日: 昭和26年4月27日 / 結論: 破棄自判
一 経済関係罰則の整備に関する法律第一条の規定と対比して見ると、同条は別表甲号に掲げる経済団体の「役員其ノ他ノ職員ハ罰則ノ適用ニ付テハ之ヲ法令ニ依リ公務ニ従事スル職員ト看做ス」旨を規定しているが同第二条には、かかる規定は存在しない。すなわち、以上各規定の趣旨からみれば、右別表甲号、乙号掲記の経済団体の職員はいずれも本来…
事件番号: 昭和23(れ)407 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 破棄差戻
被告人の官職名その他身分關係を確定しないで、單に郵便局に勤務し、電信事務を擔當していたと云うだけでは、果して被告人が法令に依り公務に從事する資格ある者であつたかどうか明確でないのであつて、被告人が公務員であつたことの判示としては不十分である。
事件番号: 昭和24(れ)856 / 裁判年月日: 昭和25年2月28日 / 結論: 破棄自判
一 按ずるに刑法第七條にいわゆる公務員は官制職制によつて其職務權限が定まつているものに限らずすべて法令によつて公務に從事する職員を指稱するものであつて其法令中には單に行政内部の組織作用を定めた訓令と雖も抽象的の通則を規定しているものであれば之を包含するものであることは大審院判例の示すところであつて、今之れを改むべき理由…
事件番号: 昭和23(れ)1752 / 裁判年月日: 昭和24年4月9日 / 結論: 棄却
家庭用米穀配給通帳は各世帶毎に交付せられるものであつて右通帳における世帶主の氏名の記載はその通帳を特定するためには極めて重要な記載であつて、世帶主甲名儀の通帳と同乙名儀の通帳とは、たとえ通帳自體は同一物が利用せられ從つてその通帳の作成名儀者は同一であつても、全く別個の通帳と認めざるを得ない、されば原判決が前示被告人の所…