判旨
虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。
問題の所在(論点)
刑法156条の虚偽公文書作成罪における「公務員がその職務に関し作成すべき文書(公文書)」の該当性判断の基準が問題となった。
規範
刑法156条にいう「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員がその職務上の権限に基づいて作成する文書を指す。当該文書が公務員の職務権限の範囲内にあるものであれば、その種類や特定の事務目的に限定されることなく、広く公文書に該当すると解すべきである。
重要事実
被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該当するかが争われた。なお、本件文書の具体的な内容や、作成に関わった公務員の役職・具体的な事務内容などの詳細な事実は、判決文からは不明である。
あてはめ
原判決が本件文書を刑法156条にいわゆる「公務員の職務に関する文書」に該当すると判断した点について、当該文書が公務員の職務執行の過程で作成されるべき性質を有するものである以上、その法的評価は正当である。所論のように強制により作成された調書であることを認めるべき証拠もないため、職務上の文書としての適格性は否定されない。
結論
本件文書は刑法156条にいう公務員の職務に関する文書に該当する。
実務上の射程
本判決は、公文書の意義を広く捉える実務上の立場を再確認したものである。答案作成上は、作成者が公務員であること、およびその作成が職務権限に基づくものであることを指摘すれば、文書の形式を問わず本罪の客体性を肯定して差し支えないことを示す射程を持つ。
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
事件番号: 昭和32(あ)1425 / 裁判年月日: 昭和35年11月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)等における「公文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、その形式や名称の如何を問わず、実質的に公務員の職務権限に基づき作成されたものであればこれに該当する。 第1 事案の概要:本件は、被告人らが共謀し、公文書を偽造(虚偽記載)し、これを行使したとして虚偽公…
事件番号: 昭和30(あ)3708 / 裁判年月日: 昭和33年4月11日 / 結論: 棄却
村長がその名義の内容虚偽の公文書を作成した場合は、それが専ら第三者の利をはかる等不法な意思に出でその職務権限の乱用と認められる場合であつても、刑法第一五六条の罪が成立し、同法第一五五条の罪が成立するものではない
事件番号: 昭和28(あ)2010 / 裁判年月日: 昭和29年4月15日 / 結論: 棄却
一 文書偽造罪における行使の目的は、必ずしも本来の用法に従つて、これを真正なものとして使用することに限るものではなく、真正な文書としてその効用に役立たせる目的があれば足りる。 二 公文書とは、公務所又は公務員がその名義をもつてその権限内において所定の形式に従い作成すべき文書を指し、実生活に交渉を有する事項の証明又は権利…
事件番号: 昭和23(れ)407 / 裁判年月日: 昭和23年7月29日 / 結論: 破棄差戻
被告人の官職名その他身分關係を確定しないで、單に郵便局に勤務し、電信事務を擔當していたと云うだけでは、果して被告人が法令に依り公務に從事する資格ある者であつたかどうか明確でないのであつて、被告人が公務員であつたことの判示としては不十分である。