判旨
虚偽公文書作成罪(刑法156条)等における「公文書」とは、公務員がその職務上作成すべき文書を指し、その形式や名称の如何を問わず、実質的に公務員の職務権限に基づき作成されたものであればこれに該当する。
問題の所在(論点)
刑法156条(虚偽公文書作成罪)及び158条(偽造公文書行使罪等)に規定される「公文書」の意義、および特定の職務上の文書がこれに該当するか否か。
規範
刑法156条、158条にいう「公文書」とは、公務員又は公務所がその職務に際し作成すべき文書をいう。作成の権限を有する公務員が、その職務の範囲内において作成した文書であれば、その名称や性質にかかわらず公文書にあたると解される。
重要事実
本件は、被告人らが共謀し、公文書を偽造(虚偽記載)し、これを行使したとして虚偽公文書作成罪及び偽造公文書行使罪等に問われた事案である。被告人側は、問題となった文書が刑法上の「公文書」に該当しない旨を主張して上告したが、第一審及び原審はこれを公文書と認定して有罪を維持していた。
あてはめ
原審が維持した第一審判決の認定によれば、所論指摘の文書は、公務員がその職務権限に基づいて作成したものであることが認められる。そうであれば、当該文書が特定の名称を有しているか否かにかかわらず、実質的に公務員の職務上の文書としての性格を有している以上、刑法上の公文書として保護すべき対象に該当すると判断される。
結論
所論指摘の文書は、刑法156条および158条に規定する公文書にあたると解するのが相当であり、被告人らの上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、公文書の定義を実質的に捉える実務上の基準を確認したものである。答案上は、公務員が職務として作成した文書であれば、公文書偽造罪等の客体になり得ることを論じる際の根拠として利用できる。特に、形式的な公認書類に限らず、実務上作成される報告書や証明書等の公文書該当性を肯定する際に有用である。
事件番号: 昭和29(あ)3426 / 裁判年月日: 昭和32年11月29日 / 結論: 棄却
所論指示書と題する文書の内容文言が、たとえ被告人以外の者の手で既に記載されてあつた場合であつても、それが無権限者によつてなされたものであり、且つa地方事務所長たる記名職印が施されてはじめて効用ある文書として完成するものであると認められる以上、行使の目的をもつて右文言の書面に無権限に右事務所長名の記名ゴム印及びその職印を…
事件番号: 昭和31(あ)153 / 裁判年月日: 昭和31年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】虚偽公文書作成罪(刑法156条)の客体である「公務員がその職務に関し作成すべき文書」とは、公務員が職務権限に基づき作成する文書全般を指し、その内容や形式は限定されない。 第1 事案の概要:被告人が関与した特定の文書(本件文書)について、これが刑法156条に規定される「公務員の職務に関する文書」に該…
事件番号: 昭和31(あ)17 / 裁判年月日: 昭和31年7月5日 / 結論: 棄却
A法務社岸和田支局またはB地方法務新聞宇治山田支局各名義の各船舶登記証書を作成した場合においても、A法務社岸和田支局なる印の「社」およびB地方法務新聞宇治山田支局之印なる印の「新聞」という各文字の処を殊更に不鮮明に押捺し、各その形式外観によつて、一般人をしてA法務局岸和田支局またはB地方法務局宇治山田支局が権限により作…
事件番号: 昭和29(あ)3851 / 裁判年月日: 昭和32年10月4日 / 結論: 棄却
作成権限者たる公務員を補佐して公文書の起案を担当する公務員が、行使の目的で内容虚偽の公文書を起案し、情を知らない右上司を利用してこれを完成した場合は、虚偽公文書作成罪の間接正犯が成立する。
事件番号: 昭和33(あ)1735 / 裁判年月日: 昭和34年8月28日 / 結論: 棄却
A鉄道管理局B電力区助役として区長を補佐する傍ら同管理局から出納員もしくは事務助役出納員として指命され、部内職員の給料、族費等の交付、保管等対内的な出納事務には従事するが、同電力区助役もしくは右出納員名義をもつて対外部関係に関する公文書を作成すべき一般的職務権限を有しない被告人が、行使の目的をもつて内容虚偽の電柱代金代…