論旨は被告人は本件窃盜の共謀者ではなく、窃盜の犯意ないこと記録上明瞭であると主張するのであるが、原審第二回公判調書の記載によれば、被告人がA外三名と共謀して判示日時、判示專賣局出張所に赴き他のものが同所倉庫内から判示被害物件を盜み出す間外で見張りをなししかもその賍物の運搬を手傳つた旨自認していることを認め得るのである。原審は右被告人の自供に基いて判示のとおり被告人を本件窃盜の共同正犯と認定したのであるが、この認定はその引用證據に照らし肯認するに難くないのである。蓋し窃盜の共謀者がたとえ窃盜の現場において、唯見張りをなしただけで直接窃取行爲に關與しなかつたとしても、窃盜正犯の罪責を兔れ得ないことは當然だからである。
窃盜共謀者の見張と共同正犯
刑法235條,刑法60條
判旨
窃盗の共謀者が窃盗の現場において見張りをなし、直接の窃取行為に関与しなかった場合であっても、窃盗罪の共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
窃盗の共謀に基づき、現場で「見張り」及び「運搬の補助」のみを行った者について、窃盗罪の共同正犯(刑法60条)が成立するか。
規範
特定の犯罪を遂行する共謀が認められる場合、共謀者のうち一部の者が実行行為を分担し、他の者が現場で見張り等の補助的行為を行ったに過ぎないときであっても、共謀に基づき一体となって犯罪を実行したといえる。したがって、現場で直接の実行行為に関与しない見張り役も、刑法60条の共同正犯としてその罪責を負う。
重要事実
被告人は、Aほか3名と共謀して専売局出張所に赴いた。他の共犯者が同所倉庫内から被害物件を盗み出す間、被告人は倉庫の外で見張りを担当し、さらに盗み出された贓物(盗品)の運搬を手伝った。被告人はこれらの事実を自認していたが、直接の窃取行為(実行行為)を行っていないことを理由に、窃盗罪の成立を争った。
あてはめ
被告人はAらと本件窃盗の共謀を遂げている。その上で、実行行為の際、現場の外で「見張り」を行うことで他の共犯者の実行を容易にし、さらに「運搬を助ける」という重要な役割を果たしている。このような行為は、共謀に基づく犯罪の遂行に密接に関与したものであり、直接窃取行為に関与していないことは共同正犯の成立を妨げない。被告人の自供に基づき、共謀と現場での役割分担が明確に認められる以上、被告人は実行犯と一体となって窃盗を行ったと評価できる。
結論
被告人が窃盗の現場で見張りをなしただけで直接窃取行為に関与しなかったとしても、窃盗罪の共同正犯としての罪責を免れない。
実務上の射程
共謀共同正犯ないし実行分担のある共同正犯の典型例(見張り役)を示す射程の長い判例である。答案上は、①共謀、②共謀に基づく実行、③正犯性の三要素を検討する際、特に現場での「見張り」が心理的・物理的に実行行為を支えている点を指摘し、正犯性を肯定する根拠として本判例の論理を用いる。現場共犯における役割分担の法理として基礎的な位置付けにある。
事件番号: 昭和23(れ)351 / 裁判年月日: 昭和23年7月20日 / 結論: 棄却
一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。 二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。 三 論旨は何日…
事件番号: 昭和23(れ)356 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
數名のものが強盜の共謀をしてその内一名が屋外の見張りを擔當し他のものが強盜の實行行爲をした場合には、その見張りをした者についても強盜の共同正犯が成立することは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三五號事件判決)