一 數名共同で強盜することを謀議して、その實行行爲の分擔を定め、各自の行爲を集結して所期の目的を達成した以上、たとい犯行現場において見張をしたに過ぎないものであつても、なお強盜の共同正犯たるの責を兔れ得ないものであるということは當裁判所の判例とするところである。 二 窃盜罪における被害物件の判示としては、窃取された財物の何たるかを明らかにすれば、十分なのであつて、これを具體的に確定する外その價格までも認定しなければならぬものではない。
一 強盜の見張りと強盜の共同正犯 二 窃盜罪における被害物件の判示程度
刑法236條,刑法60條,刑法235條,刑訴法360條1項
判旨
複数人で強盗を謀議し、実行行為を分担して目的を達成した場合には、犯行現場で「見張り」を担当したに過ぎない者であっても、強盗罪の共同正犯としての責任を負う。
問題の所在(論点)
強盗の共謀に基づき現場で見張りを行った者が、実行犯が強取した具体的な財物を認識していなかった場合、強盗罪の共同正犯(刑法60条、236条)としての責を負うか。
規範
刑法60条の共同正犯が成立するためには、①数名が共同して特定の犯罪を行うことを謀議し、②その謀議に基づき各自の行為を分担・集結して実行し、③所期の目的を達成することが必要である。この要件を満たす限り、実行行為の一部(分担された役割)が現場での見張りに留まる場合であっても、共謀共同正犯としての責任を免れない。
重要事実
被告人は、他4名と共謀してA方から金品を強奪することを企てた。被告人外1名は戸外で見張りを行い、他の3名が屋内に侵入して家人を脅迫し、A所有の腕時計1個を強取した。被告人は、屋外で見張りをしていたため、屋内の実行犯が具体的にどのような財物を強取したかを知らず、事後にも告げられなかったと主張して、強盗罪の共同正犯の成立を争った。
あてはめ
被告人は他4名と共に金品強奪の謀議を行い、これに基づいて役割を分担し、現場で見張りという重要な実行行為の一部を担っている。被告人の行為は、他の実行犯による脅迫および財物強取という一連の強盗行為を補完し、当初の目的を達成するために集結されたものといえる。したがって、たとえ直接的にどの財物が奪われたかを分担の性質上知り得なかったとしても、謀議の範囲内で行われた強盗の結果について責任を負うのが相当である。
結論
被告人は見張りを担当したに過ぎないとしても、強盗罪の共同正犯としての責を免れない。したがって、本件上告は理由がない。
実務上の射程
共謀共同正犯における実行行為の分担と責任の範囲に関する古典的な判例である。「見張り」が共同正犯としての実行行為性を有することを確認しており、現場共犯における一部実行全部責任の原則を説明する際の根拠として機能する。
事件番号: 昭和23(れ)351 / 裁判年月日: 昭和23年7月20日 / 結論: 棄却
一 窃盜の共犯者と意思連絡のもとに見張をした場合は窃盜の共同正犯と斷ずべきものである。 二 他人の財物を奪取する意思連絡の下にその目的を達するために、或者は財物の奪取行爲を擔當し、他の者は被害者に暴行又は脅迫を加えた場合に、その全員について強盜罪の共同正犯が成立することは多く論ずるまでもないことである。 三 論旨は何日…
事件番号: 昭和23(れ)356 / 裁判年月日: 昭和23年7月3日 / 結論: 棄却
數名のものが強盜の共謀をしてその内一名が屋外の見張りを擔當し他のものが強盜の實行行爲をした場合には、その見張りをした者についても強盜の共同正犯が成立することは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年三月一六日言渡昭和二二年(れ)第二三五號事件判決)