麻藥取締規則第四二條にいわゆる「所有又は所持」については、何等の制限も條件もないから、麻藥取扱者たる麻藥小賣業者が同規則所定の者以外の者から麻藥を受取り、これを所有又は所持するに至つた場合も含む。
麻藥取締規則第四二條にいわゆる「所有又は所持」の意義
昭和21年厚生省令25號麻藥取締規則42條
判旨
麻薬取扱者である麻薬小売業者が、麻薬地方卸売業者以外の者から麻薬を担保として受領し所持する行為は、当時の法規上、所持の態様に特段の制限がないため、違法な所持には当たらない。
問題の所在(論点)
麻薬小売業者が、法令で定められた正規の供給ルート(麻薬地方卸売業者等)以外から麻薬を譲り受けて所持する行為について、当時の麻薬取締規則42条(麻薬取扱者の所持容認規定)の範囲内として無罪となるか。
規範
麻薬取扱者が麻薬を所有または所持できる旨を定めた規定(旧麻薬取締規則42条)において、その所有・所持の態様に特段の制限や条件が付されていない場合、当該規定は一般に所有・所持と認められるすべての場合を指す。したがって、麻薬取扱者が正規のルート以外から麻薬を収受した結果としての所持であっても、同条の概念に包摂され、許容される所持に該当する。
重要事実
被告人Bは、麻薬小売業者としての麻薬取扱者であったが、麻薬地方卸売業者以外の者から、貸金に対する担保物件として麻薬(塩酸コカイン)を受け取り、これを自宅に隠匿・所持したとして起訴された。
あてはめ
当時の規則は、麻薬取扱者の範囲を限定し所在を明確にすることを期していたが、麻薬小売業者が卸売業者以外から麻薬を買受け・収受する行為自体を処罰する規定を設けていなかった。また、規則42条は麻薬取扱者の所持について「業として行う場合」といった制限を付しておらず、広く所持を認めている。本件における被告人の所持は、担保受領という収受行為の結果として生じたものであるが、規則42条が認める「所持」の概念に含まれる。したがって、当該所持は法令により許された範囲内のものといえる。
結論
被告人の所持は罪とならず、無罪とした原判決は正当である。
実務上の射程
本判決は、当時の取締規則の不備(収受行為の処罰規定欠如と所持規定の包括性)を前提とするものである。現代の麻薬及び向精神薬取締法下では、受領ルートや所持の目的・態様が厳格に規制されているため、本判決の結論が直ちに適用されるわけではないが、罪刑法定主義の観点から、許認可者が法令の文言上制限されていない行為を行った場合の処罰の可否を検討する際の参考となる。
事件番号: 昭和26(あ)185 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 破棄自判
旧麻薬取締規則第二三条にいわゆる授受とは、贈与、消費貸借等所有権の移転を伴う場合に限らず、販売の委任等相手方に麻薬の処分権を与えてこれを交付するがごとき行為を含む。
事件番号: 昭和24(れ)2770 / 裁判年月日: 昭和25年7月21日 / 結論: 棄却
麻藥取締規則(昭和二一年厚生省令第二五號)施行中において不法に麻藥を所持した行爲とその所持者が自らこれを自己の身体に使用した行爲とは各別罪を構成する
事件番号: 昭和25(れ)1721 / 裁判年月日: 昭和26年2月22日 / 結論: 棄却
原判決が所論の刑法第六〇条を明示していないことは所論のとおりであるが、その判示第三として「被告人Aは阿片末の売却斡旋方依頼を受け更に被告人Bに依頼してここに右両被告人は共同して他に売却するためにC方に同行持参する迄共同所持し」と例示しているから、原判決は被告人B相被告人Aの両名の判示阿片末所持の犯行について刑法第六〇条…