旧麻薬取締規則第二三条にいわゆる授受とは、贈与、消費貸借等所有権の移転を伴う場合に限らず、販売の委任等相手方に麻薬の処分権を与えてこれを交付するがごとき行為を含む。
旧麻薬取締規則第二三条にいわゆる授受の意義
麻薬取締規則23条
判旨
旧麻薬取締規則23条にいう「授与」とは、贈与や消費貸借等の所有権の移転を伴う場合に限らず、販売の委託等により相手方に麻薬の処分権を与えて交付する行為も含まれる。
問題の所在(論点)
旧麻薬取締規則23条(現行の麻薬及び向精神薬取締法における授与罪等に相当)にいう「授与」の意義につき、所有権の移転を伴わない販売委託のための交付行為が含まれるか。
規範
「授与」の意義については、麻薬管理を登録・免許等を受けた一定の組織に限定し、それ以外の者への流通を厳格に禁止する法令の趣旨及びその英文表記(delivering)に照らして判断すべきである。したがって、必ずしも所有権の移転を伴う必要はなく、販売の委託等により相手方に麻薬の処分権を与えてこれを交付する行為もこれに該当する。
重要事実
麻薬取扱者ではない被告人は、塩酸モルヒネ約250グラムを所有した際、これを他者に転売して利益を得る目的で、Bに対して販売の委託を行い、その際、当該塩酸モルヒネをBに手交した。原審は、同規則の「授与」を贈与や消費貸借等の所有権の移転を伴う場合に限定し、本件のような販売委託に伴う交付は罪にならないとして無罪を言い渡したため、検察官が上告した。
あてはめ
麻薬管理に関するGHQの覚書及びこれに基づく規則の趣旨は、許可された組織外での麻薬流通を包括的に禁止することにある。本件において、被告人がBに対して販売を委託し麻薬を手交した行為は、英文法文上の「delivering」に該当し、相手方に事実上の処分権限を付与して流通させるものである。このような交付行為は、所有権の移転の有無にかかわらず、麻薬の不正流通を防止するという規制目的の網に密接に関わるため、「授与」に該当すると評価される。
結論
被告人がBに対して販売委託の目的で麻薬を手交した行為は、旧麻薬取締規則23条の「授与」にあたる。したがって、これを無罪とした原判決には法令適用の誤りがある。
実務上の射程
麻薬取締法における「授与」の概念を、単なる所有権の移転(贈与等)に限定せず、販売委託等の目的で行われる「占有の移転(処分権の付与を伴うもの)」にまで広げた。答案上は、授与の定義を論じる際、形式的な私法上の所有権移転の有無にとらわれず、規制の趣旨(不正流通の防止)から広く解釈する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和27(あ)3637 / 裁判年月日: 昭和28年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】麻薬の譲渡罪における「譲渡」とは、有償・無償を問わず、また販売の依頼に伴う見本の交付であっても、物の占有を移転させる行為を広く包含する。 第1 事案の概要:被告人Aは、被告人Bに対して麻薬の販売を依頼した。その際、販売のための見本として、燐酸コデイン末約0.5gをBに対して手渡した。弁護人は、この…
事件番号: 昭和28(あ)2803 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
一 旧麻薬取締法(昭和二三年法律第一二三号)第三条にいう「譲り渡し」とは、所有権の移転を目的とする麻薬の授受の場合に限られない。 二 塩酸モルヒネ末を所持する者が、これを他人に交付して注射液の製剤を依頼し、その後注射液として引渡を受けて所持する場合は、塩酸モルヒネ末の所持罪と注射液の所持罪との二罪が成立し併合罪となる。…