一 麻薬使用者が麻薬取締規則第四六条所定の報告書を提出するにあたつて、同条第三号にいわゆる年末に現在した麻薬は、その現在するに至つた事情の如何を問わずその数量中に加算しなければならない。 二 麻薬取締規則第二三条は、麻薬取締法第三条等のように、麻薬取扱者はその業務の目的以外のために所定の行為をしてはならない趣旨ではない。 三 麻薬取締規則第四二条は、麻薬取扱者に対しては、麻薬の入手経路所持の目的の如何を問わず、一般に所持と認められる凡ての場合について麻薬の所持を認めているものと解せられる。
一 麻薬取締規則第四六条の決意 二 麻薬取締規則第二三条の法意 三 麻薬取締規則第四二条の法意
麻薬取締規則46条,麻薬取締規則23条,麻薬取締規則42条,麻薬取締法3条
判旨
麻薬取扱者である麻薬使用者が年末に現在する麻薬の数量を報告する義務(麻薬取締規則46条3号)は、その現在に至った経緯を問わず発生するが、同規則23条の禁止規定は麻薬取扱者以外を対象とするものであり、別段の定めがない限り、麻薬使用者の授与行為を処罰することはできない。
問題の所在(論点)
1. 麻薬取締規則46条3号の現在数量報告義務は、不法に入手・所持された麻薬についても及ぶか。 2. 麻薬取扱者による麻薬の授与行為に対し、同規則23条を適用して処罰することができるか(麻薬取扱者の業務外行為への同条適用の可否)。
規範
1. 麻薬取締規則46条3号の報告義務は、年末に現在する麻薬が同規則2条所定のものである限り、その入手経緯や事情の如何を問わず発生する。 2. 同規則23条は、麻薬取扱者以外の者が麻薬の製剤・販売・授与等を行うことを禁止する趣旨であり、麻薬取扱者自身の行為については別段の制限規定がない限り、当然には同条による処罰の対象とならない。
重要事実
麻薬使用者(麻薬取扱者)である被告人が、正当なルート以外から入手した、あるいは業務範囲外の目的で所持していた麻薬について、年末の現在数量として厚生大臣に報告しなかった。また、被告人が麻薬を授与した行為についても、同規則23条違反として起訴された。原審は、不法な事情で発見された麻薬には報告義務(46条3号)が及ばないとし、一方で授与行為については23条を適用して有罪としたため、検察官および弁護人がそれぞれ上告した。
あてはめ
1. 規則46条は無籍麻薬の存在を防止する趣旨であり、報告対象に何ら制限を設けていない。したがって、たとえ不法な事情で発見された麻薬であっても、現に存在した以上、報告義務は免れない。 2. 規則23条は「麻薬取扱者でなければ……授与……することができない」と規定し、非取扱者の行為を禁止する形式をとる。規則全体として取扱者の業態別制限(29条以下)は存在するが、23条自体は取扱者の業務外目的の行為を直ちに禁止する趣旨とは解せない。本件規則下では、麻薬使用者の授与行為を禁止処断する別段の規定を欠いている。
結論
1. 不法な所持であっても現在数量の報告義務は認められるため、報告を怠った点について規則46条3号違反が成立する。 2. 麻薬取扱者である被告人の授与行為について、規則23条を適用して処罰することはできない。
実務上の射程
罪刑法定主義の観点から、禁止規定(規則23条)の対象者が「麻薬取扱者以外の者」に限定されている場合、取扱者が業務外で行った行為であっても、別段の処罰規定がない限り拡張解釈して処罰することは許されないことを示す。行政取締法規の解釈において、報告義務等の管理規定の網羅性と、罰則規定の厳格な解釈を区別する際の指標となる。
事件番号: 昭和23(れ)255 / 裁判年月日: 昭和23年7月17日 / 結論: 棄却
麻藥取締規則第四二條にいわゆる「所有又は所持」については、何等の制限も條件もないから、麻藥取扱者たる麻藥小賣業者が同規則所定の者以外の者から麻藥を受取り、これを所有又は所持するに至つた場合も含む。
事件番号: 昭和27(あ)5837 / 裁判年月日: 昭和28年6月18日 / 結論: 棄却
麻薬取締規則第五六条第一項第三号、第五九条は麻薬所持者に対し、その所持をつづける限りその届出を要求しているのであつて、届出の日限は、単に届出義務を履行するための猶予期間たるに過ぎない。