一 記録を調べて見るに本犯行の行はれたのは昭和二三年三月六日午後九時半頃であり、翌七日午前三時四〇分頃犯行現場から、あまり遠くない被告人の居宅において被告人の就寝中逮捕されたものであつて、犯行の時から、發覺まで僅か六時間と一〇分ほど經過したにすぎない、被告人は就寝中であつたため、顯著な犯罪の痕跡のある被服の一部は被告人の身につけていなかつたが、被告人の寝室中に在つたのであるから、所謂準現行犯として逮捕したものであることを推認し得る。しかし、所論の如く嚴密に云へば、本件逮捕は舊刑訴法第一三〇條第二項に當らないと見るのが妥當であるから、本件の逮捕は違法であるといわなければならない。しかし勾留状を發した手續そのものについては、何等違法と認むべきところはないから、勾留状そのものを、違法であるとはいい得ない。論旨は違法な逮捕に基いて發せられた勾留状であるから、勾留状もまた不當違法であると主張するが、獨自の見解にすぎない。 二 すでに勾留状が適法である以上、勾留中になされた訴訟行爲を違法であると主張する論旨は採用しがたいばかりでなく、逮捕手續の違法は原判決に影響を及ぼさないこと明白であるから、本件逮捕手續の違法は破棄の理由とはならないものである。(昭和二三年(れ)第七七四號同年一二月一日大法廷判決参照)
一 準現行犯人を現行犯とした不法逮捕と同逮捕に基いてなされた勾留手續の正否 二 逮捕の違法と上告理由
舊刑訴法130條2項,舊刑訴法411條
判旨
違法な逮捕に続く勾留であっても、勾留手続自体に違法がなければ、その勾留や勾留中の訴訟行為が当然に無効となるわけではなく、また逮捕手続の違法は判決に影響を及ぼさない限り破棄事由とはならない。
問題の所在(論点)
先行する逮捕手続に違法がある場合、その後の勾留状の発付手続の効力、および勾留中になされた訴訟行為や判決の妥当性にどのような影響を及ぼすか。
規範
1. 逮捕手続が適法でない場合であっても、その後の勾留状発付手続自体に違法がなければ、勾留そのものを違法と断ずることはできない。2. 逮捕手続の違法は、それが判決に影響を及ぼすことが明白でない限り、上告審における判決の破棄事由(旧刑訴法準用)には当たらない。
重要事実
被告人は昭和23年3月6日午後9時半頃に犯行に及び、翌7日午前3時40分頃、犯行現場から遠くない自宅で就寝中に逮捕された。逮捕時、犯行から約6時間10分が経過しており、犯罪の痕跡がある被服を身につけていなかったが、寝室内にそれらが存在していたため準現行犯として逮捕された。弁護人は、本件逮捕は準現行犯の要件を欠く違法なものであり、それに続く勾留や起訴も無効であると主張した。
あてはめ
本件逮捕は、犯行からの時間的経過や状況に鑑みると、厳密には旧刑訴法130条2項の準現行犯要件を満たさず違法である。しかし、勾留状の発付手続自体に独自の違法は認められない。したがって、違法な逮捕を前提としているからといって勾留状までもが当然に不当・違法となるものではなく、勾留中の訴訟行為を違法とする余地はない。また、本件の逮捕手続の違法が原判決の事実認定や量刑といった結論に影響を及ぼしたとは認められない。
結論
本件逮捕は違法であるが、その後の勾留は適法であり、逮捕の違法は判決に影響を及ぼさないため、破棄事由には当たらない。
実務上の射程
違法収集証拠排除法則が確立する前の古い判例であるが、現代の司法試験においても「逮捕の違法が勾留の効力に及ぶか」という論点(勾留の違法性承継)において、原則として承継を否定する立場を示す際の参照判例となる。ただし、現在では「重大な違法」がある場合には勾留請求を却下すべきとする運用が一般的であるため、答案上は本判決の法理を基礎としつつ、憲法の適正手続の観点から修正を検討する必要がある。
事件番号: 昭和26(れ)1263 / 裁判年月日: 昭和26年12月7日 / 結論: 棄却
原判決は、被告人等は、原判示のごとく押収にかかる革帯(証第三号)樫棒(証第二号)及び繩(証第四号)を使用して、被害者に暴行を加えその結果、遂に死亡するに至らしめた事実を認定し、右認定の証拠として押収にかかる右革帯、樫棒及び繩の存在を判決に挙示しているにかかわらず、右物件については、原審公判において、適法に証拠調を施行し…