原判決は、被告人等は、原判示のごとく押収にかかる革帯(証第三号)樫棒(証第二号)及び繩(証第四号)を使用して、被害者に暴行を加えその結果、遂に死亡するに至らしめた事実を認定し、右認定の証拠として押収にかかる右革帯、樫棒及び繩の存在を判決に挙示しているにかかわらず、右物件については、原審公判において、適法に証拠調を施行した証跡のないことは上告人の指摘するとおりである。しからば、原判決には適法な証拠調を経ない証拠を証拠として犯罪事実を認定した違法があるものというべく右の違法は原判決の事実の認定に影響を及ぼすことは勿論であるから、本件上告は理由あり、原判決は破棄を免れない。
適法な証拠調を経ない証拠物を証拠とした判決の違法
旧刑訴法336条,旧刑訴法341条
判旨
適法な証拠調べを経ていない証拠を犯罪事実認定の基礎とすることは、判決に影響を及ぼすべき重要な法令違反となる。
問題の所在(論点)
公判期日において適法な証拠調べの手続を経ていない証拠物件を、犯罪事実認定の基礎とすることができるか(証拠裁判主義の意義)。
規範
裁判所が犯罪事実を認定するためには、公判期日において、刑事訴訟法に基づいた適法な証拠調べの手続を経た証拠によらなければならない。この手続を欠いたまま証拠を採用し事実を認定することは、訴訟手続の法令違反を構成し、その違法が事実認定に影響を及ぼす場合には判決の破棄事由となる。
重要事実
被告人らは、革帯、樫棒、縄を使用して被害者に暴行を加え、死亡させたとして起訴された。原審は、これらの物件を証拠として挙示し、被告人らの犯行を認定したが、原審の公判記録によれば、当該物件について適法に証拠調べを施行した形跡が認められなかった。
あてはめ
原判決は、証拠物件である革帯、樫棒、縄を事実認定の証拠として判決文に引用している。しかし、これらの物件について公判廷で適法な証拠調べが行われた証跡がない。したがって、原判決は適法な証拠調べを経ない証拠を犯罪事実の認定に供したといえ、この手続上の違法は事実認定の根幹に関わるため、判決の結果に影響を及ぼすことは明らかである。
結論
適法な証拠調べを経ていない証拠を基礎とした原判決には、判決に影響を及ぼすべき法令の違反があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
証拠裁判主義(刑事訴訟法317条)の帰結として、証拠能力がある証拠であっても、適法な証拠調べ手続(同法292条以下)を経ない限り、事実認定の基礎にできないことを示した基本的判例である。答案上は、手続的瑕疵が判決に及ぼす影響を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)463 / 裁判年月日: 昭和26年6月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が原審で主張していない場合であっても、原判決が認定した事実関係に照らして正当防衛(刑法36条1項)や過剰防衛(同条2項)の成立が明らかに否定される場合には、これらの規定を適用しないことに違法はない。 第1 事案の概要:被告人は刑事裁判の原審において、正当防衛または過剰防衛の主張を行っていなか…