刑訴應急措置法第一二條の規定は、憲法第三七條第二項の趣旨に反するものでないことは當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第八三三號同二四年五月一八日大法廷判決參照)
刑訴應急措置法第一二條の合憲性
刑訴應急措置法12條,憲法37條2項
判旨
被告人の精神状態を判断するにあたり、専門家の鑑定を経ることは必須ではなく、諸般の証拠に基づき裁判所が自ら判断することが可能である。
問題の所在(論点)
刑事裁判において、被告人の犯行時の精神状態(責任能力)を認定するにあたり、裁判所は必ず専門家による鑑定を経なければならないか。
規範
被告人の犯行時における精神状態(責任能力の有無・程度)の判断は法律判断であり、裁判所は専門家による精神鑑定の結果に拘束されるものではない。したがって、裁判所が諸般の証拠に基づき合理的に当時の精神状態を判定し得ると判断した場合には、必ずしも専門家による鑑定を経ることを要しない。
重要事実
被告人は本件犯行当時、飲酒の影響により心神耗弱の状態にあったと主張した。原審は、証人の供述その他の記録に現れた諸般の証拠を総合的に検討し、被告人が飲酒により心神耗弱の状態にあったとは認められないと判断した。これに対し、被告人側は、専門家による精神鑑定の手続きを経ていないことを理由に、当該判断には違法があると主張して上告した。
あてはめ
本件において、原審は証人Aの供述や事件記録に現れた具体的な客観的証拠に基づき、被告人の犯行当時の精神状態を認定している。裁判所がこれらの証拠によって精神状態を十分に判定し得ると認めた以上、その判断過程に経験則違反は認められない。専門家の鑑定はあくまで裁判所の判断を補助する手段の一つに過ぎず、事実認定の基礎となる証拠が十分に存在する場合には、鑑定を経ないまま精神状態を認定することも裁判所の裁量の範囲内である。
結論
被告人の精神状態の判定について、裁判所が諸般の証拠に基づき自ら判断し得る以上、専門家の鑑定を経なかったとしても違法ではない。
実務上の射程
責任能力の判断が最終的には裁判所に委ねられた法的判断であることを示す。実務上、精神鑑定が実施されることは多いが、本判例は、鑑定が未実施であっても他の証拠(犯行前後の行動、供述、飲酒量等)から責任能力を肯定・否定できることを明確にしており、答案上は裁判所の自由心証と法的判断の優越性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)128 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】心神喪失等の精神状態の有無を判断するにあたり、必ずしも専門家の鑑定を経る必要はなく、他の証拠によってこれを判断することが認められる。 第1 事案の概要:被告人は「相当飲酒」した状態で犯行に及んだが、原審はその酩酊の程度が心神喪失または心神耗弱の段階に達していた事実は認定しなかった。弁護人は、専門家…