判旨
犯行当時に心神耗弱の状態にあったとしても、その事実のみをもって直ちに検察官面前調書作成時においても同様の状態にあったとは認められない。
問題の所在(論点)
犯行時に心神耗弱状態にあったことが認められる場合、その事実から当然に、検察官による取調べ時の供述能力や任意性に疑義が生じ、証拠能力が否定されるか。
規範
供述証拠の任意性や証拠能力の判断において、犯行時の精神状態と供述時の精神状態は別個に検討されるべきであり、犯行時の責任能力の有無が当然に供述の効力に影響を及ぼすものではない。
重要事実
被告人が犯行当時、心神耗弱の状態にあったと主張される事案において、弁護人は、検察官による聴取書(検面調書)作成時も同様の状態であったとして、憲法違反および証拠能力の欠如を理由に上告した。
あてはめ
本件において、犯行当時に心神耗弱の状態であったとしても、検察官の聴取書作成時において同様に精神障害等の影響下にあったとは認められない。したがって、供述時の精神状態を根拠として憲法違反を主張する論旨は採用し得ない。
結論
犯行時の心神耗弱を理由とした検面調書の証拠能力否定は認められず、上告は棄却される。
実務上の射程
責任能力(刑法39条)と供述能力・供述の任意性(刑訴法319条1項等)を区別する実務上の運用を裏付けるものである。犯行時の精神障害を理由に供述の証拠能力を争う際は、供述時点での具体的な精神状態を別途立証・主張する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和26(れ)128 / 裁判年月日: 昭和26年5月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】心神喪失等の精神状態の有無を判断するにあたり、必ずしも専門家の鑑定を経る必要はなく、他の証拠によってこれを判断することが認められる。 第1 事案の概要:被告人は「相当飲酒」した状態で犯行に及んだが、原審はその酩酊の程度が心神喪失または心神耗弱の段階に達していた事実は認定しなかった。弁護人は、専門家…