どの程度に證人調をするかは事實審たる原裁判所の裁量權に屬するところであるから、辯護人が右兩名を證人として申請したにもかかわらず原審が右申請を却下して證人調をしないで被告人を處斷したからといつて原判決には毛頭審理不盡の違法がない。
證人申請の却下と審理不盡の有無
舊刑訴法344條1項
判旨
証人尋問の採否は事実審裁判所の裁量に属し、情状に関する証人申請を却下したとしても、直ちに審理不尽の違法とはならない。また、刑の執行猶予を言い渡すか否かも事実審裁判所の裁量権に属する事項である。
問題の所在(論点)
証人申請の却下が審理不尽の違法(刑事訴訟法違反)を構成するか。また、情状事実が存在する場合に執行猶予を付さないことが違法となるか。
規範
どの程度の証人取調べを行うかは、原則として事実審裁判所の裁量権に属する。また、刑の執行猶予を言い渡すか否かの判断も、事実審裁判所の専権(裁量権)に属する事項である。
重要事実
被告人の弁護人は、原審において被告人の性格や家庭の事情等を立証するため、実父の知人であるAおよび実母Bを証人として申請した。しかし、原審はこの申請を却下し、証人尋問を実施せずに判決を下した。さらに、被告人には犯行後の改悛の情や特段の家庭事情があったものの、原審は執行猶予を付さなかった。これに対し、弁護人は審理不尽および執行猶予不付与の不当を理由に上告した。
あてはめ
証人申請の採否は事実審の広範な裁量に委ねられており、本件で原審がAおよびBの証人申請を却下したことは裁量権の範囲内である。したがって、証人取調べを行わなかったことに審理不尽の違法は認められない。また、執行猶予の可否も事実審の裁量であり、たとえ被告人に有利な動機や改悛の状況、家庭環境が存在したとしても、それらを考慮した上で執行猶予を付さない判断をしたことは違法ではない。
結論
本件証人申請の却下に審理不尽の違法はなく、執行猶予を付さなかった原判決に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
刑事訴訟において証拠調べの必要性の判断(刑訴法297条、規則190条等)が裁判所の裁量であることを示す基本的事例。答案上は、情状立証の要否や審理不尽を論じる際に、裁判所の裁量権を肯定する根拠として活用できる。ただし、現代の運用では重要証拠の拒否が裁量逸脱とされる余地がある点に注意を要する。
事件番号: 昭和25(れ)1460 / 裁判年月日: 昭和26年2月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所がどの程度の証拠調べを行うかは、裁判所の合理的な裁量に委ねられる。共同正犯の成立に関し、既に他の証拠が取り調べられている場合には、証人尋問の請求を却下しても、立証の途を不当に阻止した違法があるとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は共同被告人と共謀の上、工場の倉庫からフィルムを窃取したとし…