上告裁判所は上告趣意書において主張されている事實裁判所の手續上の事實が一件記録により認め得ない場合上告人において該事實を證明しないにも拘わらず、更に進んで職權を以てその事實の有無を調査すべき義務を負うものではない。そして「記録第一二二丁Aの上申書、同第一二三丁a村長Bの證明書」等の存在は必ずしも所論書面の提出を明瞭ならしめるものでないことは多言を要しないところである。されば記録上他に該書面の提出を窺い得べき證據のない本件において、原審がかゝる事實を認め得ないとしたことは正當であり、原判決には所論のような違法はなく論旨は理由なきものである。
上告趣意書において主張されている下級審の手續上の事實が、記録上認め得ない場合に職權を以てその事實を調査することの要否
舊刑訴法434條,舊刑訴法435條
判旨
証拠申請の採否は原則として事実審裁判所の裁量に委ねられており、憲法37条2項前段も、裁判所が不必要と認める証人まで全て尋問すべきことを義務付けるものではない。
問題の所在(論点)
事実審裁判所が被告人側の証拠申請を却下することが、憲法37条2項前段(証人喚問権)に反し、裁量権の逸脱として違法となるか。
規範
証拠申請の採否は、特段の定めがある場合を除き、事実審裁判所の裁量に委ねられる。憲法37条2項前段は、被告人側に証人尋問権を保障するものであるが、案件の判断上不必要と思われるものまで悉く尋問しなければならないという趣旨ではない。したがって、証拠申請を不必要と認めて却下することは、その裁量権の範囲内であれば適法である。
重要事実
被告人側は、第2審において被害の賠償等に関する犯情を立証するため証拠申請を行った。しかし、第2審裁判所は、審理の経過に鑑み、当該証拠を不必要と判断して申請を却下した。これに対し、被告人側は憲法37条2項等の違反を理由として再上告した。
あてはめ
本件において、第2審の審理結果に照らせば、仮に被告人が主張する被害賠償等の犯情に関する事実が立証され量刑上斟酌されたとしても、判示された犯罪事実に照らして第2審の言い渡した刑が直ちに条理に反し違法になるとはいえない。このような審理の経過に鑑みれば、当該程度の犯情についての証拠申請を不必要として却下した判断は、事実審裁判所の裁量権の範囲内にあるといえる。
結論
第2審による証拠申請の却下は適法な裁量権の行使であり、憲法37条2項前段に違反しない。
実務上の射程
刑事訴訟法298条に基づく証拠調べの要否判断において、裁判所の広範な裁量を認める際のリーディングケースである。特に情状に関する証拠の採否において、結論に影響を及ぼさない程度の事情であれば却下可能であるとする論理を示す際に活用できる。
事件番号: 昭和24(れ)826 / 裁判年月日: 昭和24年7月2日 / 結論: 棄却
しかし、憲法第三七條第二項は、裁判所が必要適切と認めて喚問を許容した證人に限る規定であることは、當裁判所理屡次の判例とするところである。