一 銃砲等所持禁止令附則大二項所定の所持許可の申請期間は同令第一條第一項第一乃至四號に該當する銃砲等について定められたものであつて、かかる銃砲等についても、右の許可申請をしないときは、右期間内の所持も不法であるとなすこと當裁判所の判例に示されている通りである(昭和二二年(れ)第一八一號、昭和二三年四月一七日第二小法廷判決參照) 二 所論のいわゆる提出期間云々が當時警察等において一定の時期を限つて、銃砲等の提出を命じ、これに應じたものは不問に付する等の措置をとつたことを指すならば、假りにそのような事實があつたとしてもそれは固より行政上の措置にすぎないのであるから不法の所持を適法化するものではない。 三 互に暴行し合ういわゆる喧嘩は鬪爭者双方が攻撃防禦を繰り返す一團の連續的鬪爭行爲であるから、鬪爭のある瞬間においては、その一方が専ら防禦に終始し、正當防衞を行う観を呈することがあつても、闘争の全般からみては、刑法三六條の正當防衛觀念を容れる餘地のない場合がある。(昭和二三年(れ)第七三號同年七月七日大法廷判決參照)
一 鉄銃砲等所持禁止令における所持許可の申請と所持の適否 二 銃砲等の提出をしたものは不問に付するとした警察の行政上の措置と所持の適否 三 喧嘩と正當防衞
銃砲等所持禁止令1條1項1號,銃砲等所持禁止令1條1項4號,銃砲等所持禁止令附則2項,銃砲等所持禁止令1條,銃砲等所持禁止令1條附則2項,憲法36條
判旨
互いに暴行し合う喧嘩において、闘争者が闘争を予期して武器を携え相手方に立ち向かった場合、たとえ闘争の一局面で防御に終始する形となったとしても、全般の状況から見て正当防衛(刑法36条1項)は成立しない。
問題の所在(論点)
自ら闘争を予期して武器を携え、相手方の呼び出しに応じて格闘を開始した場合において、刑法36条1項の正当防衛が成立するか。
規範
互いに暴行し合う喧嘩は、闘争者双方が攻撃防御を繰り返す一団の連続的闘争行為である。そのため、闘争のある瞬間において一方が防御に終始しているように見えたとしても、闘争の全般から見て法律秩序に反すると認められる場合には、正当防衛の観念を容れる余地はない。
事件番号: 昭和23(れ)756 / 裁判年月日: 昭和23年11月13日 / 結論: 棄却
原審に於ては被告人からも、辯護人からも、被告人の行爲が正當防衞に出たものであるということは主張されていないのであるから原審がこの點についての判斷を示さなかつたのは當然である。
重要事実
被告人は賭博の賭金を巡るトラブルに端を発した闘争の際、一度は自宅に帰ったが、被害者からの呼び出しに応じ、短刀を懐中に忍ばせて自ら屋外に出て格闘した。その結果、格闘中に窮地に陥り、相手の心臓を貫通させる刺創を負わせて殺害するに至った。
あてはめ
被告人は、一度闘争を離脱しながらも、被害者の呼び出しに応じて自ら短刀を携え格闘の場に赴いている。このような事案では、単に防御的反撃に終始したのではなく、自ら闘争を予期して相手方に立ち向かったものと評価できる。したがって、窮地に陥って反撃したとしても、一連の闘争の全般的な状況に照らせば、その行為は適法な急迫不正の侵害に対する防御行為とは認められず、法律秩序に反するものといえる。
結論
被告人の行為は法律秩序に反するものであり、正当防衛は成立しない。
実務上の射程
「喧嘩」における正当防衛の否定を端的に示した判例である。答案上は、急迫不正の侵害の存否(侵害の急迫性)を否定する根拠として、自ら進んで闘争に加わる「自招侵害」や「積極的加害意思」が認められる類型を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和25(あ)1243 / 裁判年月日: 昭和26年8月9日 / 結論: 棄却
本件第一審判決は、弁護人の正当防衛の主張を排斥して「Aが拳銃を携えていたことは認め得るが、同人が拳銃を被告人の心臓部に突き付けたということは之を認め難く、従つて未だ急迫不正の侵害行為があつたとは謂い得ない」と判示し、原判決もこの認定を是認したのである。「被害者が拳銃を所持していたことを認め」たからとて、それは必ずしも所…
事件番号: 昭和28(あ)5025 / 裁判年月日: 昭和30年10月25日 / 結論: 棄却
被告人が被害者と対面するにおいては攻撃を受ける蓋然性が覆い状況の下に、被害者に対面して謝罪させ相手が攻撃して来たらこれに立ち向うため日本刀一振を拔身のまま携え、被害者の様子を窺ううち、被害者が被告人を認め矢庭に出刃庖丁をもつて突きかかつて来た場合、被害者が不正な侵害は急迫なものといえず、被告人の被害者に加えた傷害行為は…
事件番号: 昭和25(れ)1609 / 裁判年月日: 昭和26年5月15日 / 結論: 破棄差戻
被害者が夜間被告人方に押しかけ、戸締りしてある表入口の戸を強いて取はずして屋内に侵入し被告人を殴打したため、被告人が憤激の余り日本刀をもつて被害者を刺殺した事実を認定しながら、被告人の右行為が盗犯等の防止及処分に関する法律第一条に該当するとの弁護人の主張に対し、何等の理由をも説明しないで、単に被告人の右行為は同条所定の…
事件番号: 昭和24(れ)1719 / 裁判年月日: 昭和24年11月8日 / 結論: 棄却
原判決は、被告人の判示第一の犯行につき、その犯意の證明として「若し日本刀や匕首で相手を斬り付けるときは、斬り所によつては當然相手を死に到らしめることを豫想しながら」本件犯行に出たことを記載している。自己の行爲が他人を死亡させるかも知れないと意識しながら敢えてその行爲に出た場合が殺人罪のいわゆる未必の故意ある場合に當るこ…