論旨を貫徹すれば生活困難な家族を有する者は如何なる大罪を犯しても實刑を科することができない結果となる、しかし、憲法第二五條は國家の刑罰權に對しかような不合理な制限を加える趣旨でないことは當裁判所判例の示す通りである。(昭和二二年(れ)第一〇五號同二三年四月七日大法廷判決言渡)
被告人に實刑を科するために家族が生活困難に陷る場合と憲法第二五條
憲法25條
判旨
強盗罪における「暴行又は脅迫」は、被害者が凶器を正確に認識していなくとも、深夜の住居侵入等の状況に照らし、客観的に抵抗を抑圧するに足りるものであれば足りる。
問題の所在(論点)
被害者が凶器の正体を正確に把握していない場合であっても、強盗罪の構成要件である「反抗を抑圧するに足りる程度の脅迫」があったといえるか。
規範
刑法236条1項にいう脅迫は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度のものであることを要する。この判断にあたっては、単に被害者が現実に抱いた認識のみならず、犯行の時間、場所、凶器の形状、周囲の状況等を総合し、社会通念上の常識に照らして客観的に決すべきである。
重要事実
被告人は深夜、19歳の被害者宅に住居侵入した。被告人は被害者に対し、匕首(あいくち)を突きつけて脅迫し、現金を強奪した。被害者は、突きつけられた物が匕首であるとはっきり認識せず、「光る棒のようなもの」だと思っていたが、深夜に突如見知らぬ男が侵入して脅迫してきたことに強い畏怖を抱いた。
事件番号: 昭和23(れ)913 / 裁判年月日: 昭和23年12月16日 / 結論: 棄却
被告人等を少年法による保護處分その他實刑を科せざる處分を受けしめるのが相當であるか否か等はすべて事實審たる原裁判所の裁量權にのみ屬するところである。
あてはめ
被害者が凶器を「光る棒」としか認識していなかったとしても、①深夜という時間帯に、②見知らぬ男が住居へ侵入し、③現実に殺傷能力のある匕首を用いて脅迫行為に及んでいる。このような状況下では、19歳の若者である被害者が抵抗できないほどの畏怖を抱くことは、社会通念上の常識に照らして当然であるといえる。したがって、客観的に反抗を抑圧するに足りる脅迫があったと認められる。
結論
被害者が凶器を正確に認識していなくとも、状況に照らし抵抗不能な程度の畏怖を生じさせたのであれば、強盗罪が成立する。
実務上の射程
強盗罪の暴行・脅迫の程度の判断において、主観説(被害者の心理)と客観説(一般的・客観的危険性)を架橋する判断枠組みとして活用できる。被害者の認識不足を理由に窃盗罪への減縮を主張する弁護側の反論を封じる際に、状況論から客観的抑圧可能性を導く論理として有用である。
事件番号: 昭和23(れ)795 / 裁判年月日: 昭和23年11月18日 / 結論: 棄却
一 少年法第七一條第一項の趣旨は、裁判所が審理した結果被告人等に對して所論のごとく保護處分をなすのを相當と認めた場合には少年審判所に事件を送致しなければならぬのであるが、被告人等に對して保護處分をするのが相當であるか否かは、事實審たる原裁判所が諸般の具體的事情を考慮して定むべきものであつてその裁量權にのみ屬するところで…
事件番号: 昭和22(れ)41 / 裁判年月日: 昭和22年11月24日 / 結論: 棄却
一 深夜數人兇器を携えて屋内に侵入して判示のような脅迫行爲をしたときは、通常被害者において反抗を抑壓せられる程度の畏怖を感ずることは明瞭であるから、原判決がその行爲を(恐喝ではなく)強盜と認定して之に對し強盜の法條を適用したのは正當であつて何等の違法はない。 二 所論の被害物件が隠退蔵物資なりやは被告人の本件犯行(強盜…