一 もともと犯罪の日時は罪となるべき事實そのものではないから、本件強盜殺人の犯行そのものの認定及び採證に違法も不當もない本件に在つては犯行の時刻を逐一證據によつて認めた理由を示さないからとて所論のような不法があるものとは云へい。 二 凡そ犯罪の實行行爲の具體的記述にあたつては、巨細に亘り之を記載するを妨げないが、さればと云つてその記載事實の詳細に亘り逐一證拠によつて認めた理由を明示するの必要はなく、要は犯罪構成事實の主要部分が認定記述せられ、之に對する採證が明示せられていれば、それで必要にして十分な判決理由となるものと解するのが相當である。
一 犯罪の日時に關する立證 二 判決に於ける事實摘示の具體性の程度
刑訴法336條,刑訴法360條1項,刑訴法410條19號
判旨
判決における事実認定において、実行行為の細部や犯行時刻などの付随的事実について、そのすべてを逐一証拠によって裏付ける必要はない。犯罪構成事実の主要部分が認定・記述され、それに対する証拠が明示されていれば、必要かつ十分な判決理由となる。
問題の所在(論点)
判決書における事実認定において、犯罪の構成事実ではない付随的事実(日時・場所・方法の細部)についても、逐一証拠との対応関係を明示する必要があるか。
規範
判決書における事実認定の合理性(刑事訴訟法旧446条、現335条1項関係)に関し、犯罪構成事実の主要部分が認定・記述され、これに対する証拠が明示されていれば足りる。実行行為の具体的記述が詳細にわたる場合であっても、その詳細のすべてについて逐一証拠による理由を明示する必要はない。
重要事実
被告人と相被告人Aは、強盗殺人の罪で起訴された。原審は、被告人がAから受け取った羽織を被害者の頭部に被せて右肩を下にして倒し、被告人が足を押さえている間にAが馬乗りになった等の詳細な犯行状況を認定した。これに対し被告人側は、共謀の事実や犯行時刻(午後9時頃)、被害者の姿勢(左肩を下にした点)、具体的な役割分担(足を押さえた点)について、公判供述と不一致がある、あるいは証拠がないにもかかわらず事実認定されたとして、証拠なき認定の違法を主張して上告した。
あてはめ
まず、共謀については原審公判廷の各供述により証明可能である。犯行時刻については、証拠上の幅(午後7時から12時)から諸般の事情を総合して認定したものであり、厳密な証拠がないとしても事実認定の専権に属する。さらに、被害者の姿勢や「足を押さえていた」等の実行行為の細部は、本件犯行の主要構成事実には属しない付随的事実である。実行行為を詳細に記述すること自体は妨げられないが、その詳細すべてについて証拠による理由を示す必要はなく、主要部分の認定と採証が明示されていれば、理由不備の違法はないといえる。
結論
被告人の主張する各事実は犯罪構成事実の主要部分ではないため、それらについて個別に証拠の挙示がなくても原判決に違法はなく、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、判決書の理由に記載すべき「罪となるべき事実」の程度を画した判例である。答案上は、訴因の特定や判決の理由不備(刑訴法378条4号)が問われる場面で、どの程度の事実認定に証拠の裏付けが必要か、あるいは事実の摘示が必要かを論じる際の準拠枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和26(れ)418 / 裁判年月日: 昭和26年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の弁解が単に犯罪事実を否認するにとどまる場合、判示事実を認定すれば当該弁解は自ら排斥されたことが明白である。したがって、旧刑訴法360条2項(現行刑訴法335条2項に相当)が定める理由の説明として、特に弁解を排斥する消極的理由を説示する必要はない。 第1 事案の概要:被告人が公訴事実(罪とな…
事件番号: 昭和23(れ)1861 / 裁判年月日: 昭和24年4月30日 / 結論: 棄却
自白を補強する証拠は、必ずしも自白にかかる犯罪構成事実の全部にわたる必要はなく、自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであれば足りる。
事件番号: 昭和22(れ)92 / 裁判年月日: 昭和22年12月4日 / 結論: 棄却
一 連續一罪を構成すべき數多の行爲を判示するには、各個の行爲の内容を一々具體的に判示することは要しない。數多の行爲に共通した犯罪の手段方法その他の事實を具體的に判示するの外、その連續した行爲の始期終期回數等を明かにし、且つ財産上の犯罪で、被害者又は贓額に異同があるときは、被害者中或る者の氏名を表示するの外、他は員數を掲…